2024年11月01日 15:00 〜 16:30 10階ホール
「2024 米大統領選」(12) 西山隆行・成蹊大学教授

会見メモ

11月5日の米大統領選投票日を前に、西山隆行・成蹊大学教授が直近の情勢、今後注視すべきポイントなどについて話した。

西山さんは9月に刊行した『アメリカ大統領とは何か 最高権力者の本当の姿』(平凡社新書)で大統領制の基本的な構造と特徴を明らかにするとともに、過去数十年間に大統領職にあった人がどのような動きをとったのかを解説している。

 

司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)


会見リポート

「新政権になっても混乱は続く」

大石 格 (日本経済新聞社編集委員)

 今年のアメリカ大統領選挙はトランプへの銃撃、バイデンの撤退など、さまざまな紆余曲折があり、夏ごろまでになされた分析はほぼ意味をなさなくなった。裏返せば、一連の「2024米大統領選」シリーズの登壇者たちの話がピント外れだった場合でも仕方がない面がある。

 だが、投票日の4日前、オクトーバー・サプライズの時期も過ぎた11月に登壇するとなると言い訳はきかない。本人も「結果についての大胆な予測がいちばん盛り上がる」と切り出しつつ、慎重な物言いだった。

 勝敗を左右するファクターとしては「激戦州を取り巻く状況」「第3の候補の影響」「期日前投票(対面投票+郵便投票)の影響」などを取り上げた。

 大統領選挙にばかり関心が向きがちだが、激戦州のネバダ、アリゾナでは人工妊娠中絶の是非に関する住民投票が同日に実施されることに注目すべきであるなどの指摘があった。トランプが「中絶問題は州が判断」と容認派との全面衝突を避けたことが選挙戦で有効との見方は、ほぼその通りとなった。

 トランプとハリスのいずれもが弱い候補であり、両党とも内部対立を抱えることも強調された。どちらの候補も4年前よりも得票を減らしたことを考えれば、冷静な見方であり、史上まれに見る盛り上がりとあおった日米メディアの報道の方が反省すべきかもしれない。

 アメリカは大統領ひとりで動かしているのではなく、三権分立のシステムが重要との指摘もあった。

 最後にいかなる選挙結果になっても、それで落着ではなく、新政権になっても混乱は続くであろうという悲しい見通しも示された。

 「大統領選は米国民の分断を鮮明にするイベント」という分析を聞いて、選挙をしさえすれば民主主義になるわけではない、との思いを一段と深くした。


ゲスト / Guest

  • 西山隆行 / Takayuki NISHIYAMA

    成蹊大学教授 / Professor, Seikei University

研究テーマ:2024 米大統領選

研究会回数:12

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