会見リポート
2024年11月15日
13:00 〜 14:30
10階ホール
「巨大地震を考える」(4) 西村卓也・京都大学防災研究所教授
会見メモ
地殻変動学・測地学などを専門とする京都大学防災研究所教授の西村卓也さんが「地殻変動データからみる南海トラフ巨大地震」をテーマに登壇。海溝型地震である南海トラフのメカニズムや、南海トラフ地震に時間予測モデルを適用する問題点、臨時情報への評価などについて話した。
司会 行方史郎 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞社)
会見リポート
臨時情報 発信方法に課題
垂水 友里香 (毎日新聞社くらし科学環境部)
南海トラフ地震臨時情報が8月、制度導入以降初めて発表され、その翌月、有識者6人で構成する気象庁南海トラフ地震評価検討会委員に就任した。
専門は地殻変動。1994年以降、国土地理院のGNSS連続観測網が整備され、現在の観測点は約1300点。この30年のデータの蓄積により、人の爪や髪が伸びるほどゆっくりとした大地の動きが明らかになってきた。将来の大地震の震源域となるプレート間の固着域の推定や、大地震の兆候を知る手がかりとなるスロー地震の挙動もわかってきた。
南海トラフ地震については、100~200年間隔で繰り返す歴史的、地質的証拠がある、ひずみが蓄積しつつあるデータがあるという二つの理由から「将来の発生がほぼ確実な地震」と説明。そのうえで「地震やスロースリップが大地震を誘発した事例は世界的に報告されている。南海トラフでも周辺に影響を与える可能性は高く、地震活動が高まったときに社会に伝える臨時情報のようなシステムはあった方がいい」と述べた。臨時情報の課題として、東日本大震災の反省を受け、最大規模を盛り込み過ぎた震源域の運用や、世界の地震統計を利用した地震の発生確率の提示などを指摘した。
自身が観測を続けてきた1月の能登半島地震にも触れた。半島で異常な地殻変動が起き、周囲の活断層に地震を起こしやすくする影響が及んでいることは、応力変化による評価から分かっていた。発信を続けてきたつもりだった。ところが、地震後の周囲の反応は意外なものだった。「知っていたのなら、なぜ教えてくれなかったのか」。臨時情報のような仕組みがあれば、広く社会に浸透したのではないかという思いがある。地震前から「海底活断層に地震活動が移れば、M7級が起こりうる」と西村さんらの警鐘をくり返し聞いていた報道の側として、社会への発信の難しさを考えさせられた会見だった。
ゲスト / Guest
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西村卓也 / Takuya NISHIMURA
京都大学防災研究所教授 / Professor, Ph.D. Research Center for Earthquake Hazards Disaster Prevention Research Institute Kyoto University
研究テーマ:巨大地震を考える
研究会回数:4