2024年11月11日 14:00 〜 15:30 10階ホール
「中国で何が起きているのか」(21) 関志雄・野村資本市場研究所シニアフェロー

会見メモ

野村資本市場研究所シニアフェローの関志雄さんが登壇し、景気後退と潜在成長率の低下が同時進行している中国の現状とその要因、今後の課題などについて解説した。

 

司会 高橋哲史 日本記者クラブ企画委員 (日本経済新聞社)

 


会見リポート

中国経済 不振の原因は?

村上 太輝夫 (朝日新聞社論説委員)

 関志雄さんの魅力は、経済学の常識を自在に活用し、筋道を立てて議論を導く手法の鮮やかさにある。何かにつけ特殊な存在と見られて取っつきにくい印象を持たれがちな中国だが、少なくとも経済については合理的に説明できる部分が大半を占めることに改めて気付かされる。

 その中国経済が曲がり角にさしかかっているだけに、今回の記者会見は時宜を得た企画だった。

 経済の停滞に対しては主因が需要側、供給側のいずれにあるのかが問われる。関さんの結論は明快で、両方だ。中国では「需要不足を反映した景気後退と、供給側の制約の深刻化による潜在成長率低下が同時に進行している」

前者には住宅市場の低迷が影を落とす。回復はなかなか見通せず、「バランスシート調整に時間がかかる」との見立てだ。

 後者については少子高齢化、投資効率の悪化といった国内要因に加え、米中対立によるデカップリングという外部要因も関係する。

 では、どうすればいいか。一つは生産、消費とも海外依存度を下げ国内循環に重点を置くことだが、特に関さんが指摘するのは、民間消費の対GDP比の低さという根深い構造問題だ。

 その原因の一つは所得格差にある。関さんいわく「共同富裕が実現すれば国全体の消費も拡大する」。習近平政権の看板倒れに近いスローガンをあえて引用したところは、気の利いた皮肉として受け止めたい。

 供給側の課題は言うまでもなく生産性の向上であり、習政権のもう一つのスローガンである「新質生産力」にかかわってくる。だが中国では政府による行き過ぎた介入が心配される面もあるという。

 過度の楽観も悲観も排して中国経済を丁寧に腑分けする。冷静に考えるとはつまりこういうことだ、というお手本を示してもらった。


ゲスト / Guest

  • 関志雄 / Chi Hung KWAN

    野村資本市場研究所シニアフェロー / Senior Fellow, Nomura Institute of Capital Markets Research

研究テーマ:中国で何が起きているのか

研究会回数:21

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