2024年02月09日 14:00 〜 15:30 10階ホール
「中国で何が起きているのか」(7) 小笠原欣幸・東京外国語大学名誉教授

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会見リポート

習政権 台湾揺さぶり続く

鈴木 玲子 (毎日新聞社外信部)

 日本でも大いに注目を集めた台湾総統選は、与党・民進党の頼清徳氏が初当選を果たし、同党は史上初の同一政党3期連続政権を実現した。頼氏は蔡英文政権の外交・安全保障路線の継続を訴えて支持を集めた。

 台湾の民意は、中国との統一でも独立でもない「現状維持」を望み、「緩やかな台湾アイデンティティ」が主流。対中関係では頼氏、野党・国民党の侯友宜氏、民衆党の柯文哲氏がいずれも中国の「一国二制度」反対を明言し、「統一拒否」の民意が改めて示された。ただ、中国との距離感では、野党は対話に積極的で、現状維持を前提とした対話への期待感が存在することも指摘した。

 立法委員(国会議員)選挙(定数113)では、民進党は51議席に減少。国民党は52議席ではあるが与党を過半数割れに追い込み、民衆党は8議席ながらもキャスチングボードを握った。この結果について、総統選で民進党を選びながらも、内政などへの不満を示した「有権者の優れたバランス感覚の表れ」と見る。

 今後の政局については、頼次期政権は、議会で過半数がない中での政権運営で「いばらの道」になると指摘した。国民党は脱原発など蔡政権の政策を否定して頼政権を追い込む戦略。民衆党はフリーハンドを重視し「中国が強烈に反発するであろう米国からの大型武器売却などには反対する可能性がある」と述べた。

 一方、中国はさまざまな選挙介入で野党を側面支援。与党を過半数割れに追い込み、共産党の統一戦線工作が一定の成果を上げたと自己評価しているだろうと見る。習近平政権の長期化により、中国がすぐに台湾に軍事侵攻する状況にはないが、中台対話の機運はしぼみ、今後も台湾への揺さぶりが続くと予想した。また、米大統領選でトランプ氏が復活した場合、メディア受けを狙ったパフォーマンスで台湾が振り回される可能性があるとも指摘した。


ゲスト / Guest

  • 小笠原欣幸 / Yoshiyuki OGASAWARA

    東京外国語大学名誉教授 / Professor emeritus, Tokyo University of Foreign Studies

研究テーマ:中国で何が起きているのか

研究会回数:7

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