2023年12月11日 14:00 〜 15:30 10階ホール
「ハマス・イスラエル衝突」(4) 江﨑智絵・防衛大学校准教授

会見メモ

パレスチナ・イスラエル問題の専門家である江﨑智絵・防衛大学校准教授が、これまでのハマス・イスラエル関係を振り返るとともに、現状や今後の見通しについて語った。

 

司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK) 


会見リポート

米の圧力が停戦への決め手

宮坂 一平 (時事通信社解説委員)

 10月7日の奇襲で始まったイスラム組織ハマスとイスラエルの軍事衝突。7日間の戦闘休止を挟んで、パレスチナ自治区ガザへのイスラエルの報復攻撃は一層激しさを増し、作戦の重点は多数の住民が避難する南部にシフトした。ガザでは民間人の犠牲者が拡大、人道危機が深刻化している。中東和平を専門とする江﨑智絵・防衛大学校准教授は、イスラエルの対ハマス政策や奇襲を許した背景、今後の見通しについて論じた。

 軍事衝突は、ハマスがガザの実効的な統治者になった後の2008年以降、今回を含め5回に及ぶ一方で、イスラエルはハマスに利用価値を見いだしてきたと指摘。一つは、ハマスと自治政府主流派ファタハの対立継続により、パレスチナ国家樹立に向けた「2国家構想」を形骸化させることであり、もう一つは、ガザにおける「代理人」的立場を付与することで、より過激な組織の出現を抑え込むことだったと詳述した。

 イランやレバノンの武装組織ヒズボラの脅威が高まる中、イスラエルはハマスに抑止が機能していると考え、ガザの治安問題への優先順位が低下した状況下で、「見事に裏切られた」のがハマスの越境攻撃だったと解説。江﨑氏は、それをイスラエルの慢心と表現した。

 ネタニヤフ政権は今回の戦争目的に、ハマスのせん滅と人質の解放を掲げるが、何をもってせん滅と言えるのか明確さを欠き、戦闘行為による人質解放の成果も上げていないとして、実現性に疑問を呈した。

 イスラエルとアラブ諸国の国交正常化が進む中、「見捨てられる恐怖」に駆り立てられたハマスも、取引材料としての人質を安易に解放する気はない。双方が自らの立場に固執する限り、停戦は短期的には難しいと見通した。最終的には、イスラエルを擁護する米国が、積み上がるパレスチナの被害を見て、ネタニヤフ政権にどこかで圧力を掛けられるかどうかが決め手になると説いた。

 パレスチナの惨状はSNSを通じてリアルタイムで拡散が続いており、イスラエルと共に米国に対する国際社会の失望や批判も広がりを見せている。


ゲスト / Guest

  • 江﨑智絵 / Chie EZAKI

    防衛大学校准教授 / Associate Professor, Graduate School of Security Studies at the National Defense Academy

研究テーマ:ハマス・イスラエル衝突

研究会回数:4

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