2023年11月29日 14:30 〜 16:00 10階ホール
「ハマス・イスラエル衝突」(2) 東澤靖・明治学院大学教授

会見メモ

イスラエルとイスラム組織ハマスの戦闘では、双方の国際人道法違反が指摘される。

国際人道法は、民間人を巻き込むような攻撃や人質の拘束などについてどう定めるのか。その限界はどういった点にあるのか。

国際人権法、国際人道法を専門とする東澤靖・明治学院大学教授が解説した。

 

司会 大内佐紀 日本記者クラブ企画委員(読売新聞)


会見リポート

危惧される欧米の「二重基準」

真野 森作 (毎日新聞社外信部)

 この秋、「世界最大の難問」が再び火を噴いた。イスラエル・パレスチナ問題である。パレスチナ自治区ガザ地区を支配するイスラム組織「ハマス」とイスラエルの戦闘が10月7日に始まった。この間、双方の行為が「戦争犯罪に該当する」と指摘されてきた。一方で、今も続くロシア・ウクライナ戦争と比べ、パレスチナを巡る戦闘は複雑な要素もはらむ。国際人権法を専門とする東澤靖・明治学院大学教授がその概説を語り、今回の戦闘への応用も明快に説いた。

 国際人道法は、かつて戦争法規と呼ばれた武力紛争法を中心とする。その四つの基本原則は、①区別原則(戦闘員・軍用物と文民・民用物の区別)②軍事的必要性の原則③均衡の原則④人道の原則だという。ただ、区別原則は民間人への「意図的な攻撃」の禁止であり、付随的損害や誤爆は違反とならないといった抜け穴もある。

 今回の事例については、パレスチナを「独立主権国家と評価できる」と明言した上で、ハマスに関しては「かつて選挙で多数派を獲得し、パレスチナを代表するとの見方を全面否定することもできない」と指摘。戦闘について「武力紛争法が完全適用される可能性が大きい」と判断した。

 そして、民間人を殺害し、人質を取るなどしたハマスの行為と、民間施設への砲撃などを繰り返したイスラエル軍の行為を共に、「戦争犯罪に該当する可能性がある」と言及した。歴史的経緯や大義とは無関係に法が適用されるべきとも念を押した。

 東澤氏は最後に、イスラエルの反撃を支持する欧米の姿勢を危惧した。ウクライナ戦争に関して訴えてきた法の支配や人道主義とは大きく異なり、多くの新興・途上国から見て「二重基準」と映るのではないかという重い指摘だ。国際社会の将来に禍根を残す可能性が否めない状況となっている。

 


ゲスト / Guest

  • 東澤靖 / Yasushi HIGASHIZAWA

    明治学院大学教授 / Professor, Meiji Gakuin University

研究テーマ:ハマス・イスラエル衝突

研究会回数:2

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