会見リポート
2023年12月13日
13:30 〜 15:00
10階ホール
「中国で何が起きているのか」(3) 呉軍華・日本総合研究所上席理事
会見メモ
ワシントン駐在経験もある日本総合研究所上席理事の呉軍華さんが登壇。「中国経済のソ連化リスクと米中対立の本質」をテーマに話した。
司会 高橋哲史 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞)
会見リポート
中国経済「ソ連化」を指摘
中澤 穣 (東京新聞外報部)
「中国の経済から政治、文化へと関心を広げてきた」と語る呉軍華氏の分析は、思わぬ方向から鋭く切りこまれ、新鮮なキーワードが連続する。そうした分析は少なからず悲観的にも聞こえた。中国経済についても、米中関係に対してもだ。
中国政府が示すGDP成長率は、中国経済の現実をどれだけ反映しているのか。こんな疑問から話が始まり、習近平政権下では成長率の目標と実績がほぼ一致する「計画成長の時代になった」と皮肉る。疑わしい数字に注目するよりも「構造的に理解するべきだ」と説き、「中国経済のソ連化リスク」に話が進んだ。
最近よく指摘される中国経済の「日本化」ではなく「ソ連化」だ。ソ連と中国では高度成長期を経て低成長時代に入るという流れが相似形を描くだけでなく、改革開放以降の中国もソ連から受けついだDNAは変わらないと指摘する。国営企業の主導的地位や「和平演変」への強い警戒などが共通する。「改革開放は中国独自のものというイメージだが、1920年代にレーニンが行った新経済政策とそっくり」だという。
米中関係については「冷戦」ではなく「冷和(冷たい平和)」という言葉を示した。代理戦争によって米ソの直接衝突が回避された冷戦に対し、「冷和」では衝突のリスクが一層大きいと分析する。中期的にデカップリングが進んだ「一つの地球・二つの世界」が実現しなければ、「衝突リスクが高い」という。
最後のキーワードは「興衰治乱」。中国で王朝が興隆と衰退、安定と混乱を繰り返してきた周期は、経済のグローバル化によって終止符を打つのか、それとも中国の歴史的循環が世界に拡張されるのか。こんな興味深い問いで話が締めくくられた。
なお会場からは中国がソ連と同じく、経済だけでなく国家としても崩壊するのかという質問があり、「まだ想像できない」との答えだった。
ゲスト / Guest
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呉軍華 / Junhua Wu
日本総合研究所上席理事
研究テーマ:中国で何が起きているのか
研究会回数:3