会見リポート
2023年11月21日
13:30 〜 15:00
会見場
「中国で何が起きているのか」(1) 国分良成・慶應義塾大学名誉教授
会見メモ
経済の減速、閣僚の交代と懸念材料が目立つ中国で、いま何が起きているのかを探るシリーズ企画「中国で何が起きているのか」の第1回ゲストとして、前防衛大学校長で慶應義塾大学名誉教授の国分良成さんが登壇。
中国政治をどう見るのか、米中関係と台湾問題、日本の立ち位置はどうあるべきかなどについて話した。
司会 高橋哲史 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞社)
会見リポート
「根拠ある推察」重ねるしか
高橋 哲史 (シリーズ担当企画委員 日本経済新聞社編集委員兼論説委員)
中国がおかしい。
安定しているかにみえた習近平政権で外相、国防相が突然、解任された。経済は不動産不況を起点にかつてないほどの苦境にある。日本と同じように「失われた30年」の道を歩むのではないか。そんな懸念すら出始めた。
いまの中国をどうみればいいのだろう。それを考えるヒントがほしくて「中国で何が起きているのか」と題する記者会見のシリーズを企画した。1回目のゲストに迎えたのが、中国政治を専門とする慶應義塾大学名誉教授の国分良成さんだ。
2021年まで9年にわたって防衛大学校の学校長も務めた国分さんは、中国政治の研究を始めて今年でちょうど50年になる。その経験から語ったのは、中国という「わからない」存在をわかろうとする研究者としての覚悟だと思う。
国分さんが冒頭で紹介したのは米国で活躍した中国研究の大家、ドーク・バーネットが1970年代に残した言葉だった。「中国研究ですべての予測は暫定的であり、事態が現実に展開するにつれて修正されるものとみなされなければならない」
言わんとしたのは中国で何が起きているのか、本当のところはわからない以上、「根拠のある推察」を重ねて判断するしかない、という中国研究の難しさだ。
根拠のある推察に必要なのは「複数の客観的な証拠」「経験値・歴史的類推」「常識」の3つだという。中国では共産党の内実を記録した文献や、当事者の証言はまず表に出ない。習近平政権になり、その傾向はますます強まっている。
私たちが理解したつもりになっている中国は、どこまでいっても「推察」にすぎないのだ。中国を語る際にはそんな謙虚さと、責任の重さを忘れてはならない。国分さんはそう訴えたかったのだろう。私たちジャーナリストも、肝に銘じるべきだと感じた。
ゲスト / Guest
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国分良成 / Ryousei KOKUBUN
前防衛大学校長、慶応義塾大学名誉教授 / Honorary professor of Keio University
研究テーマ:中国で何が起きているのか
研究会回数:1