2023年09月22日 15:30 〜 17:00 10階ホール
「ウクライナ」(24) 山添博史・防衛研究所地域研究部米欧ロシア研究室長

会見メモ

領土奪還に向けてウクライナが本格的反攻を開始してから3カ月超がたった。

ロシア安全保障や国際関係史が専門の山添博史・防衛研究所地域研究部米欧ロシア研究室長が、ウクライナの攻勢作戦の展開と今後の見通しなどについて語った。

 

司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信社)


会見リポート

公正な平和 見通し立たず

名越 健郎 (時事通信出身)

 ウクライナ軍の反転攻勢は、ロシアの強力な陣地戦に苦戦しながら少しずつ防衛ラインを突破しつつあり、三カ月の攻防をロシア発、ウクライナ発の情報を基に詳細に分析した。

 山添氏によれば、この戦争はウクライナにとって「不公平なゲーム」だ。人命をあまり重視しないロシアは、犠牲を出しても新たな兵力を投入して戦い続ける。

 欧米諸国は、「早く勝て」と戦果を求める一方で、ロシアを刺激しないよう「勝ちすぎるな」と矛盾するメッセージを発信する。欧米は装備を出し惜しみし、兵器を得るにも時間がかかる。

 「ロシアは負け続けても、百点満点中三、四点減らす程度だ。ウクライナは百点取らないと勝利に届かない」

 6月に始まった反転攻勢は、ロシア軍が構築した強力な障害物に悩まされ、地雷を処理する間に、ロシア軍は砲撃や対戦車ヘリで妨害し、多くの犠牲を出した。NATOの軍事戦略では、航空戦力の支援を受けて歩兵が進むが、ウクライナへの戦闘機F16の供与は先送りされた。

 それでもウクライナ軍は地道な地雷処理と戦術転換で少しずつ突破しつつある。南部ザポリージャ州の交通の要衝トクマク、その先のメリトポリを攻略できるかが当面の焦点だが、ロシア軍の防衛線は崩れておらず、「ウクライナはやるべきことが多すぎる」。

 東部では、ウクライナ軍は5月にバフムトを奪われた後、ロシア軍の進撃を効果的に食い止めている。

 山添氏は「仮に停戦になっても、公正で永続的な平和とはいえない。占領地では人権侵害が続く。停戦協定を結んでも、ロシアは次に何をしてくるか分からない」と指摘する。ロシアには核という最終兵器があり、「最後に使うという手はまだある」という。


ゲスト / Guest

  • 山添博史 / Hiroshi YAMAZOE

    防衛研究所地域研究部米欧ロシア研究室長 / PhD, Senior Research Fellow, Regional Studies Department, The National Institute for Defense Studies

研究テーマ:ウクライナ

研究会回数:24

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