会見リポート
2023年09月11日
13:30 〜 14:30
10階ホール
「地方自治のいま」(2) 三日月大造・滋賀県知事
会見メモ
地方自治体の財政難が叫ばれる中、滋賀県の三日月大造知事は2022年7月に行われた知事選で、県民が負担する「交通税」の導入を公約に掲げ当選した。
「交通税」は利用者が減少するローカル線など公共交通機関を維持するための財源で、2024年度以降の導入を目指す。実現すれば全国初。
会見では、同県の住民アンケートで約6割が税の負担に前向きな回答をしていることも紹介された。
司会 小林伸年 日本記者クラブ企画委員(時事通信社)
会見リポート
県民負担の「交通税」導入を
美郷 真紀 (時事通信社内政部)
実現すれば全国初となる交通税。三日月氏は冒頭、導入を目指す理由として、公共交通機関の厳しい経営状況、県民主体で琵琶湖の水質改善に取り組むなど滋賀にある「自治の気概」、知事自身がJR西日本で運転士を務め、衆院議員時代には交通立法に携わった経験などを挙げ、「鉄道事業者の負担だけではもう持たない。持続可能な仕組みづくりが必要」と力説した。
滋賀県は、営業赤字により事業継続が困難とされた近江鉄道線を巡り、2019年に沿線自治体や関係事業者などを交えた法定協議会を設置。20年に公有民営での存続を決めるなど、全国に先駆け、公共交通政策を議論してきた土壌がある。
こうした動きを受け、20年に県の税制審議会で「交通税」の議論がスタート。22年、同審議会は「地域公共交通を支えるための新たな税負担に向け、挑戦、発信していくべき」との答申を出した。三日月氏は同年、「交通税」導入推進を公約に掲げ3選している。
交通税の導入方法に関しては、利用者が支払う応益負担だけではなく、住民税や法人税に超過課税を課す方法も検討されている。住民アンケートでは、公共交通の維持・投資に必要な費用の負担をしてもよいかという設問に、約6割が「思う」「どちらかといえば思う」と回答しており、三日月氏は「負担は軽い方がいいが、有権者と密に対話し、みんなで分かち合うのであれば、(増税も)理解してもらえるのでは」と持論を述べた。
現在、県では税の議論と同時進行で「滋賀地域交通ビジョン」の策定を進める。三日月氏は、税の導入時期について「残り3年間の任期では時間が足りない。ビジョン作りと共に、税制の在り方について絵姿を示すことが目標」と述べる一方、「住民と対話を重ねながら選択肢を提示するのが地方自治。交通を通じ、地方の将来に住民が思いをはせる可能性に懸けている」と、実現に意欲を見せていた。
ゲスト / Guest
-
三日月 大造 / Taizo MIKAZUKI
滋賀県知事
研究テーマ:地方自治のいま
研究会回数:2