2023年08月10日 15:00 〜 16:00 10階ホール
中満泉・国連事務次長(軍縮担当上級代表) 会見

会見メモ

中満泉・国連事務次長・軍縮担当上級代表が登壇し、現在開催中の第11回核不拡散条約(NPT)再検討会議の準備委員会や、自身も作成にかかわった政策提言「新たな平和への課題(A New Agenda for Peace)」などについて話した。

中満さんは広島、長崎の平和祈念式典に参列するため来日した。広島の式典には参列したが、長崎の平和祈念式典は台風6号の影響により招待が見送られた。

 

司会 大内佐紀 日本記者クラブ企画委員(読売新聞)

 


会見リポート

核軍縮へ具体的行動求める

田井中 雅人 (朝日新聞社ネットワーク報道本部)

 この夏も国連軍縮部門のトップとして、被爆地・広島の平和記念式典に参列した。会見冒頭で「被爆地での平和式典は、国連にとって核軍縮が軍縮分野での最重要課題であり、あきらめずに努力していくコミットメントを示す場だ」と強調。ロシアによるウクライナ侵攻で核抑止論が再燃したことを念頭に「ウクライナは核兵器を放棄したから侵略されたという誤ったナラティブ(言説)が始まりつつある」と危機感を示した。

 5月に広島で開催された主要7カ国首脳会議(G7サミット)で採択された「広島ビジョン」に対して、核抑止論を肯定するものだとの批判が被爆者らから出ていることを問われると、「G7の枠組みの中で核軍縮に特化した文書は初めて」と一定の評価をしつつ、「では、具体的な行動で示してくださいというのが、国連からのメッセージだ」とクギを刺した。

 核軍縮の現状について、核不拡散条約(NPT)第6条(誠実な軍縮交渉義務)の履行が進まないことに対する「非核保有国のフラストレーション」が2017年の核兵器禁止条約採択につながったとの認識を示した。

 例えば、2000年のNPT再検討会議では核兵器廃絶の「明確な約束」を盛り込んだ最終文書が全会一致で採択されている。だが、2015年の再検討会議は米英、昨年はロシアといった核保有国の反対で最終文書が採択できなかった経緯がある。

 2026年の次回再検討会議に向けて、「これ以上成果をあげられない状況が続くと、フラストレーションからシニシズム(あきらめ)につながり、NPT体制への脅威になりうる」と訴えた。

 さらに、国連のグテレス事務総長が7月に発表した「新たな平和への課題」にも言及。宇宙での軍拡を防ぐためのガバナンス強化や、2026年までに自律型致死兵器システム(LAWS)に対する法的拘束力のあるルールづくりを進めたい考えだ。


ゲスト / Guest

  • 中満泉 / Izumi NAKAMITSU

    国連事務次長(軍縮担当上級代表) / UN Under-Secretary-General and High Representative for Disarmament Affairs

ページのTOPへ