2023年08月08日 14:00 〜 15:30 9階会見場
「中国反スパイ法とどう向き合うか」鈴木英司・元日中青年交流協会理事長(『中国拘束2279日 スパイにされた親中派日本人の記録』著者)

会見メモ

中国で7月1日にスパイ行為の摘発強化を目的とする改正「反スパイ法」が施行された。

2016年にスパイ容疑で中国当局に拘束され、懲役6年の刑期を終え、昨年10月に帰国した鈴木英司・元日中青年交流協会理事長が「反スパイ法」の改正で懸念されることや日本政府、企業はどう対応すべきなのかなどについて話した。

鈴木さんは自身の体験をまとめた著書『中国拘束2279日 スパイにされた親中派日本人の記録』を今年4月に毎日新聞出版から刊行している。

 

司会 高橋哲史 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞)


会見リポート

邦人解放には首脳交渉必要

大熊 雄一郎 (共同通信社外信部)

 中国で7月、スパイ行為の取り締まりを徹底するため改正した「反スパイ法」が施行された。同法などに基づく邦人の拘束が相次いでおり、日本を含む外国企業や駐在員に不安が広がる。拘束するかどうかは当局のさじ加減で、いつ密告されるか分からない大変危険な状況―。中国当局にスパイ罪で摘発され6年服役した鈴木氏は会見で、実感を込めて警鐘を鳴らした。

 鈴木氏は北京市内で2013年、在日中国大使館の元公使参事官から中朝関係を巡る情報を聞き、公安調査庁側に伝えたとしてスパイ罪に問われた。鈴木氏は、聞いた情報は報道で公開されている内容だったなどとして無罪を主張。だが中国当局は「新華社が報じていないことは秘密事項だ」と言い放ったという。

 習近平指導部は、安全保障を軍事だけでなく政治や経済、外交、科学技術などの問題として幅広く捉え、「国家の安全」確保を優先課題に掲げる。国家安全部門の権限が強まり、捜査対象の幅は広がっている。

 法改正によりスパイ行為の定義が拡大され、「全ての国民」に疑わしい行為の通報を義務付けた。中国に拠点を置く企業やメディア、大使館に安全部門の監視役が送り込まれる可能性が「極めて」高くなったと指摘する。

 企業などは対応を迫られるが、スパイ行為の定義が曖昧すぎて民間レベルで有効な対策を講じるのは難しい。米欧の大使館が鈴木氏に接触し、不透明な拘束の実態把握に努めているのに対し、日本の外務省からは「1本も電話がない」。鈴木氏は、拘束された邦人の解放には首脳レベルの交渉が必要として、中国への働きかけを強めるよう日本政府に呼びかけた。

 鈴木氏は長年にわたり日中友好活動に携わり、中国側から表彰されたこともある。日中関係の柱である民間交流が難しくなっていると懸念する鈴木氏の言葉は重い。


ゲスト / Guest

  • 鈴木英司 / Hideji SUZUKI

    元日中青年交流協会理事長

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