2023年08月03日 14:00 〜 15:30 10階ホール
「地方自治のいま」(1) 山崎幹根・北海道大学公共政策大学院教授

会見メモ

4月の統一地方選挙では無投票当選が多く、議員のなり手不足が深刻化していることが明らかになった。人口減少や財政など地方自治が抱える問題も多い。

これらの問題を解決するために、先進的な取り組みを行っている自治体について取り上げるシリーズ「地方自治のいま」の第1回ゲストとして山崎幹根・北海道大学公共政策大学院教授が「地方自治の理念と現実-近年の動向を手がかりに」をテーマに話した。

 

司会 澤田信孝 日本記者クラブ企画委員(北海道新聞)

 

※YouTubeでのアーカイブ配信は行いません。ご了承ください。


会見リポート

生じた理念と現実の落差

川上 高志 (シリーズ担当企画委員 共同通信社特別編集委員)

 4月に行われた統一地方選は、地方自治を巡るさまざまな課題を浮き彫りにした。投票率は低下し、無投票や、なり手不足で定員割れの議会すらあった。地方自治体の役割の重要性は、新型コロナウイルス感染症への対応で明らかになったはずだ。自治体の力量によって対応に明確な差が現れたからだ。

 だが、首長や議会の役割はどこまで住民に認識されているのだろうか。人口減少、高齢化、財政難など深刻な課題に直面する地方自治の在り方をあらためて考えようと企画したのがシリーズ「地方自治のいま」だ。

 初回にお呼びした山崎幹根・北海道大学公共政策大学院教授には、地方自治の課題を総括的にお話しいただいた。「地方自治は民主主義の学校」と言われるが、現実には住民から縁遠い存在になっている。その「理念と現実のギャップ」が生じる要因として、山崎氏は(1)国と地方の関係(2)コロナ以降の二元代表制の在り方(3)地方議会の在り方―の三つを挙げた。

 国と地方の関係では、国が法律で基本方針を示し、自治体に計画を作成させる「計画集権」の手法が拡大していると指摘。安倍政権の地方創生も、岸田政権のデジタル田園都市国家構想も同様であり、自治体に「自発的」に計画を作らせる手法は、地方の自己責任に委ねる結果、自治体間の格差を生じさせ、地方の自主性を重視する分権に反すると指摘した。

 二元代表制に関しては、指導力をアピールした首長の実態がきちんと検証されたのかと問いかけ、首長による「専決処分」が増えている実態を紹介。地方議会の役割は、行政の監視機能、決定機能、代表機能の三つを挙げ、中でも監視機能の強化が基本であり、行政の追認機関にとどまらない地方議会の独自性と多様性が示せるかと課題を挙げた。

 整理していただいたテーマに沿って、今後、各地の具体例を紹介しながら連続会見に取り組んでいきたい。


ゲスト / Guest

  • 山崎幹根 / Mikine YAMAZAKI

    北海道大学公共政策大学院教授

研究テーマ:地方自治のいま

研究会回数:1

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