2023年07月25日 16:00 〜 17:30 10階ホール
記者に聞く ウクライナ現地取材と報道の課題

会見メモ

ロシアによるウクライナへの軍事侵攻開始前から現地で取材を重ねてきた朝日新聞国際報道部の喜田尚さん(写真1枚目)、ジャーナリストの古川英治さん(ウクライナからリモート、同3枚目)と昨年5月に現地取材した日本テレビ放送網国際部担当副部長の横島大輔さん(同2枚目)、が登壇。ロシアによるウクライナ侵攻が開始する前後の様子やウクライナの人々の状況、情報ツールが発達する中での戦争取材の実情などについて語った。

 

司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)


会見リポート

残る決断、戦い続ける心は

三浦 俊章 (朝日新聞出身)

 昨年2月のロシアの侵攻以来、当クラブでは、専門家を講師とする勉強会を重ねてきたが、記者を招いて戦争報道をテーマとするのは初の試みである。

 朝日新聞の喜田尚氏は、大多数の日本メディアが撤退する中、侵攻時のキーウに残る選択をした。「ウクライナ問題を継続取材してきた私にとって、現場を離れる判断は個人的にはなかった」という。ただ、なぜキーウに残るのか、脱出ルートはあるのか、などをめぐって本社と話し合い、社内の理解があって侵攻時の取材が可能になったと説明した。

 日本テレビの横島大輔氏は、膨大な量で流れる戦場映像について、ボディカメラやドローンの登場で迫力ある映像が手に入る一方、フェイクニュースの危険性と裏腹であり、真偽を判断するスキルが日々求められると指摘した。自前のドキュメンタリーをつくったときは、「すべて自分たちのカメラだけで取材した映像でつくろうと決めた。撮ってきたものを見つめ直す作業だった」と振り返った。

 元日経記者の古川英治氏は、「妻がウクライナ人なので、当事者でもある」と断ったうえで、現地に住むフリー記者として、なぜウクライナが戦い続けているかをテーマとしていると語った。日々感じるのは「ウクライナ人の前向きのタフさ。上からの統制ではなく、自分にできることをやるという自主性だ」という。

 質疑では、「日本の報道はウクライナ寄りではないかとの指摘がある」という点については、喜田氏が「戦争の構造としてはロシアの侵略戦争であるのは明白だ。だが、個々の戦況情報については慎重に判断しており、その二つは別だ」と答えた。

 また、古川氏は「今回の侵攻は2014年のクリミア併合に始まる。しかし、日本の政府もメディアも、北方領土問題に関心が集中して、プーチン政権がやってきたことに反応が弱かった。その検証をすべきではないか」と問題を提起した。


ゲスト / Guest

  • 喜田尚 / Takashi KIDA

    朝日新聞国際報道部

  • 古川英治 / Eiji FURUKAWA

    ジャーナリスト、元日本経済新聞

  • 横島大輔 / Daisuke YOKOSHIMA

    日本テレビ放送網国際部担当副部長

研究テーマ:ウクライナ

研究会回数:23

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