2023年06月15日 13:00 〜 14:30 9階会見場
「ジャニーズ問題から考える」(2) 芸能界の構造問題 ジャーナリスト 松谷 創一郎さん

会見メモ

文化社会学、社会情報学が専門で『SMAPはなぜ解散したのか』(SB新書、2017年)などの著書があるジャーナリストの松谷創一郎さんが登壇。日本の芸能プロダクションの特徴やジャニーズ事務所の状況や問題点など、芸能界やジャニーズ事務所の構造から、ジャニー喜多川さんによる性暴力問題、この間メディアがこの問題に沈黙を続けてきた背景などを解説した。

 

司会 田玉恵美 日本記者クラブ会員(朝日新聞)

 


会見リポート

「芸能界の構造が性加害を生じさせた」

島崎 周 (朝日新聞社社会部)

 「芸能界の構造自体が性加害を生じさせてしまった」

 タレントとの対等ではない契約やテレビや雑誌のメディアコントロール。松谷創一郎さんは、今回のジャニー喜多川氏の性加害問題の背景に、日本芸能界がつくりあげた構造のいびつさがあると指摘した。

 中でもジャニーズ事務所は、所属が男性タレントのみで事業者団体に非加盟であるなど、日本最大手でありながら「異端」とされてきた。

 松谷さんがジャニーズ事務所に疑問を覚えたきっかけは、アイドルグループ「SMAP」の2016年の解散。その後、事務所を退所する元メンバー3人のレギュラー番組が相次いで終了した。19年には公正取引委員会が、元メンバーを番組に出演させないよう圧力をかけた場合は独占禁止法に触れるおそれがあるとして、事務所に注意していた。

 今回の性加害問題がテレビや新聞で報じられてこなかった背景には、「芸能ゴシップ」扱いしてきた要因のほか、事務所によるメディアコントロールが影響していたとみる。メディア各社には「ジャニーズ担当者」がおり、そこを通じてしか取材ができないような、忖度が生じやすいしくみになっていた。また、今もジャニーズタレントのレギュラー番組が多い局ではほぼ毎日放送されており、「大なり小なり深い関係性が見てとれる」と指摘する。

 松谷さんによると、一部のテレビ局にはジャニーズ事務所の「レッスン場」があったという。喜多川氏がジュニアに体を密着させるなど不自然な行動をレッスン場でしていたとみられる証言も出ており、「メディアも共犯と言える」。この関係性を変えない限り、構造的な問題は変わらないと訴えた。

 会見の最後、松谷さんが送ったメッセージは、「空気を読まない」。今回のジャニーズの問題を顧みれば、特に私たち報道機関に向けられた言葉のように感じた。


ゲスト / Guest

  • 松谷 創一郎 / Soichiro MATSUTANI

    ジャーナリスト

研究テーマ:ジャニーズ問題から考える

研究会回数:2

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