2023年06月20日 14:00 〜 15:30 9階会見場
「放送法文書をどう読むか」(3) ジャーナリズム論の視点から放送法第4条を考える 大石裕・慶應義塾大学名誉教授、十文字学園女子大学特別招聘教授、東海大学特任教授

会見メモ

政治コミュニケーション論、ジャーナリズム論が専門で、2020年4月からBPO(放送倫理・番組向上機構)放送倫理検証委員会の委員を務める慶應義塾大学名誉教授の大石裕さんが登壇。放送法文書問題を機に見えてきた放送法とジャーナリズム、民主主義を巡る課題などについて話した。

 

司会 田玉恵美 日本記者クラブ会員(朝日新聞)


会見リポート

「ジャーナリズムは社会的責任を主張せよ」

足立 直紀 (テレビ朝日編集担当部長)

 大石教授は、メディア・ジャーナリズムが一定の社会的目的を達成するためにどういうことをするべきかという「プレスの社会的責任理論」をもっと重視して、放送の自由について考えた方が良いと指摘した。

 そのうえで、放送法に関しては、選挙報道では「量的公平」に十分配慮すべきだとしながらも、「質的公正」が重要だとし、特に、「ジャーナリズムの不作為」(=報道すべき重要な問題を報道しなかった)を防止すべきだと強調した。

 放送法4条の「政治的公平」に関しては、一つの番組ではなく、番組全体を見て判断するという総務省の解釈を「倫理規範」として受容するのにとどまらず、BPOはこれとは異なるより積極的な解釈として、社会的責任論として放送ジャーナリズムも社会に問題提起を行う使命があるのだと宣言すべきだと主張した。そのうえで、放送法4条は、政策過程やアジェンダ構築過程においては「配慮規定」あるいは「注意規定」という解釈の方が妥当ではないかと提案した。

 質問では、放送法4条はなくした方がいいのではないかという指摘も出たが、大石教授は、「外部勢力からの介入を防ぐ意味で、押し返すときの根拠になる」「ジャーナリズムの強さの裏付けとなる」と、その必要性を説いた。

 この春に文書で明らかになった放送法の解釈変更をめぐる議論が官邸内で行われていた時、私自身はまさに官邸キャップ、政治部デスクだったが、ここまでの議論が行われていたとは気づかなかった。しかし、社の上層部への圧力や、番組側の委縮により明らかに報道内容は腰砕けになった。

 当時の文書に示されるように、時の権力によってなし崩し的に放送法の解釈が歪められるようなことがあってはならない。大石教授が指摘するように、我々当事者が、より積極的に報道の自由と民主主義について考え、社会的責任を全うすることで、権力の介入を防がなければならないと改めて考えさせられた。


ゲスト / Guest

  • 大石裕 / Yutaka OISHI

    慶應義塾大学名誉教授、十文字学園女子大学特別招聘教授、東海大学特任教授 / Professor Emeritus, Law and Political Science, Keio University

研究テーマ:放送法文書をどう読むか

研究会回数:3

前へ 2024年02月 次へ
28
29
30
31
1
2
3
4
10
11
12
17
18
22
23
24
25
29
1
2
ページのTOPへ