2023年06月16日 15:30 〜 18:30 10階ホール
試写会「わたしたちの国立西洋美術館」/田中正之・国立西洋美術館館長 会見

会見メモ

東京・上野の国立西洋美術館の舞台裏で所蔵品の保存修復やコレクションの調査研究、展示の企画など美術を守り伝えることに奮闘するスタッフに密着したドキュメンタリー「わたしたちの国立西洋美術館」の試写会を開催した。

上映後、国立西洋美術館館長の田中正之さん(写真6枚目)が登壇。国立西洋美術館の成り立ちやコロナ禍、ウクライナ戦争による活動への影響、国立西洋美術館が今後目指すことなどについて話した。監督で桜美林大学教授の大墻(おおがき)敦さん(写真7枚目)も来場し、記者からの質疑に応えた。

 

司会 中村正子 日本記者クラブ企画委員(時事通信)

 

©大墻敦


会見リポート

美術館、生き残りへの挑戦

黒沢 綾子 (産経新聞社文化部)

 戦後、フランス政府から寄贈返還された「松方コレクション」を礎に、所蔵品約6000点を有する東京・上野公園の国立西洋美術館。ル・コルビュジエ設計の建築として2016年に世界文化遺産に指定され、創建時の姿に近づける整備のため20年10月から1年半、休館していた。その間、館の内部にカメラを入れ、そこで働くスタッフらの多岐にわたる活動を追ったのが、ドキュメンタリー映画「わたしたちの国立西洋美術館 奇跡のコレクションの舞台裏」(大墻敦監督)だ。7月15日から全国順次公開されるのを前に、試写と同館の田中正之館長による会見が開かれた。

 多くの人にとって美術館とは、展覧会という接点しかないかもしれない。華やかな展示の裏には、所蔵品の調査研究や保存修復、教育普及など多くの地道な仕事があり、美を守り伝えることに情熱を傾ける職員らの姿がある。田中館長は会見で「映画を通し、美術館が何をしているのか、とにかく知ってほしい」と強調した。というのも、日本の国立美術館は今、岐路にあるからだ。

 例えば海外から名品を集め、マスコミ各社が経費リスクを負う「共催展」は日本独自のモデルだが、輸送費や保険料の高騰などで、今後は減っていくとみられる。欧米に比べ、予算も人員も圧倒的に少ない日本の美術館。が、館長は「ピンチではなく、むしろ美術館や展覧会のあり方を変える絶好の機会」と説いた。

 同館は、歴史的にゆかりのある川崎重工業とオフィシャルパートナーシップを結ぶとともに、ファンドレイジング強化へ体制づくりを進めているという。経営企画、広報渉外など学芸課以外の部署も拡充。自己収入を増やし、自ら企画展を開くことで、美術館を持続可能なものにしたいという。「わたしたち」の美術品を守り伝える美術館の奮闘を、「わたしたち」はどう支えるのか。大いに考えさせられた。


ゲスト / Guest

  • 田中正之 / Masayuki TANAKA

    国立西洋美術館館長

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