2023年07月18日 16:00 〜 17:15 9階会見場
著者と語る『闘う舞踊団』演出振付家、舞踊家 金森穣さん

会見メモ

演出振付家で舞踊家の金森穣さんは、今年1月に刊行した著書『闘う舞踊団』で自身の半生と、日本で初となる公共劇場専属舞踊団「Noism」を率いてきた18年間の「闘い」をまとめた。

執筆に至った経緯や、この間何を思ってきたのか、劇場文化の活性化に必要なこと、文化政策のあり方などについて語った。

 

司会 中村正子 日本記者クラブ企画委員(時事通信)


会見リポート

人生賭けた劇場文化の闘い

飯塚 友子 (産経新聞社編集企画部)

 「あらゆる舞台芸術を愛する人々の時間と労力、人生を賭けた闘いが報われることを願っています」

 新潟市を拠点に、国内唯一の公立劇場専属舞踊団「Noism Company Niigata」を率いてきた金森穣さん。その軌跡と生い立ちをたどった初の著書は、脆弱な日本の文化行政への提言でもあり、舞台関係者以外にも広く読まれた。

 反響について、地元関係者ですら「全く知らなかった、という反応でした」と会見で苦笑した金森さん。普段は非言語表現をしているだけに、「言葉には力がある」と実感したという。

 改めて、著作に込めた思いを問われ、「『金森穣だからできた』といわれたくない。社会に劇場文化があり、そこに課題を見つけ、どう変えたら成熟していけるか。その闘いの記録を残し、参考資料となれたら」と未来の〝後継者”への願いを込めた。主宰する舞踊団の活動を通じ、100年後の日本の劇場文化に提言したい、という大きな視点の持ち主。こと日本の文化行政に話題が及ぶと、ヨーロッパで活躍した若き日々や、帰国後の新潟での実体験に裏打ちされた言葉があふれ出した。

 「そもそもこの国の劇場に専属の芸術集団が普通にあったら、コロナ禍で、国の対応があれほど遅れることはなかった」

 新型コロナウイルスの影響で、舞台芸術が大きな打撃を受けた後の政府の対応、日本社会における芸術家の価値、日本における劇場の役割…日本の劇場文化の課題は山積しているが、あくまで未来志向だ。

 「社会からこぼれ落ちていくものを、社会の上の方に対し、提示したい。だから100年かかるんです」

 恒例の揮ごうには、「志」と書き込んだ。「『自分を超えたもの』にかけるため必要なもの。そのため、闘っていきたい」

 闘いは続く。


ゲスト / Guest

  • 金森穣 / Jo KANAMORI

    Noism Company Niigata芸術総監督、演出振付家、舞踊家

研究テーマ:著者と語る『闘う舞踊団』

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