会見リポート
2023年04月06日
14:00 〜 15:30
10階ホール
「人口減少 80万人割れの衝撃」(1) 佐藤博樹・東京大学名誉教授
会見メモ
経済、社会、政治をはじめ、防衛、教育、社会保障など、あらゆる分野に影響する「人口減少問題」をさまざまな切り口から考えるシリーズの第1弾として「人口減少 80万人割れの衝撃」をスタートした。
初回のゲストとして、「こども政策の推進に係る有識者会議」の構成員をはじめ、長年、政府の少子化対策の検討に携わってきた佐藤博樹・東京大学名誉教授が登壇し、出生率低下、未婚化の要因などを解説。子育て支援は少子化対策の一部でしかないとし、少子化克服に向けては雇用環境の改善、働き方改革、意識の変革など複合的な対策が必要になるとした。
司会 辻本浩子 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞社)
会見リポート
働き方改革は少子化対策
小林 伸年 (シリーズ担当企画委員 時事通信社解説委員)
2022年の出生数がついに80万人を下回った。「少子化対策待ったなし」とは20年以上前から言われてきたが、ここ数年が本当にラストチャンスかもしれない。
そこで始めたシリーズ企画「人口減少 80万人割れの衝撃」。その第1弾として、政府の少子化対策に携わってきた佐藤博樹・東京大学名誉教授に登壇してもらった。
佐藤氏はまず、わが国が少子化に至ったメカニズムについて解説。ざっくり言えば未婚化と晩婚化による出生率低下が主因という。その上で、岸田政権が掲げる異次元の少子化対策について「一体何を実現したいのか」といぶかった。政府のたたき台では現金給付型の支援策が並ぶが、「子育て中のカップルにもう一人子を持とうと思わせる効果は期待できるが、未婚化や晩婚化の解決にはならない」と断じた。
佐藤氏によると、出生率を上げるための王道は働き方改革であり、フルタイムで働く男女を支援することだ。例えば、週2日は残業なしなど柔軟な働き方ができれば、育児を男女が公平に分担でき、女性がキャリアと子どもの二者択一で悩む必要がなくなる。未婚者にとっても、仕事以外に使える時間が増えればボランティアやリスキリングなどの学びの場が出会いのきっかけになり、未婚の理由上位の「出会いがない」の解消につながると説く。
とはいえ、これをすれば解決という切り札はなく、いろいろなことをしなければならないとも語った。一例として、既存の結婚や家族の在り方に不自由を感じる人がいることから、選択的夫婦別姓の導入を挙げた点は刮目すべきだ。
わが国の人口減少は毎年、政令市が一つ消えるくらいのスピードで進行している。日本はどうなるのだろうか。本シリーズでは、さまざまな分野の専門家を招いて人口減少の影響を考えるのと併せ、出生数を増やす方策を探っていきたい。
ゲスト / Guest
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佐藤博樹 / Hiroki SATO
東京大学名誉教授 / professor emeritus, Tokyo University
研究テーマ:人口減少 80万人割れの衝撃
研究会回数:1