会見リポート
2023年01月16日
14:00 〜 15:30
10階ホール
「2023年経済見通し」(3) 竹森俊平・経済産業研究所上席研究員
会見メモ
高インフレ時代が到来した背景と、そのなかで日本がとるべき施策について話した。
司会 小竹洋之 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞)
会見リポート
供給力不足への対応が鍵
岩本 誠也 (西日本新聞社論説委員)
「2023年の経済を見通すのは、はたして可能か?!」。会見の最後に紹介された揮ごうに全ての思いが込められているのだろう。
新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)やロシアのウクライナ侵攻など、2020年以降の世界経済は想定外の事態に振り回されてきた。先を見通すのが難しい時代だからこそ、国の経済政策の司令塔である経済財政諮問会議の民間委員を19年から21年まで務めた経済学者の見立ては参考になる。
竹森氏は主要国を覆う高インフレ(物価上昇)の背景を「世界経済が需要不足型から供給不足型へ転換したため」と分析し、供給不足への対応が日本経済が再浮上する鍵になると説いた。
構造的な供給不足の例に挙げたのはエネルギーと半導体だ。
脱炭素化の流れで化石燃料への投資が停滞し「(石油や天然ガスの)需給ギャップが発生したのを利用してロシアは戦争を仕掛けた」と説く。欧州は来冬に向けてエネルギーを確保できるか正念場で、液化天然ガスの争奪戦が激しくなれば日本にも影響が出るのは避けられない。
半導体では、米国が対中輸出規制を主導する。中国外しが進めば日本経済も打撃を受けるが、その穴を埋める国はどこか。「そこに日本の活路がある」と持論を展開した。
海外で生産拠点整備を進める台湾のTSMC、積極投資を続ける韓国のサムスンなどに比べ、日本の政府や企業は「準備ができていない」と奮起を促す。
エネルギー戦略の再構築にも注文を付けた。30年に消費電力の80%を再生可能エネルギーで賄う計画のドイツに対し、原発回帰を進める岸田文雄政権。その是非には触れなかったが、新しい原発への建て替えについては「だれが、いつ、どこでやるのか示していない」と疑問視。再生エネの拡大に欠かせない送電網整備でも政府の決断力不足を喝破した。
ゲスト / Guest
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竹森俊平 / Shunpei TAKEMORI
経済産業研究所上席研究員
研究テーマ:2023年経済見通し
研究会回数:3