2023年01月11日 13:00 〜 14:30 10階ホール
「2023年経済見通し」(1) 白井さゆり・慶應義塾大学教授

会見メモ

「2023年経済見通し」の第1回として、慶應義塾大学教授の白井さゆりさんが登壇。マクロ経済の視点から2023年の世界経済を展望するとともに、米国、ユーロ圏、中国、日本の経済の現状と見通しについても話した。

 

司会 播摩卓士 日本記者クラブ企画委員(TBS)


会見リポート

新体制下で異次元緩和の総括を

樋口 卓也 (時事通信社解説委員)

 5年に1度の日銀総裁人事と10年に及ぶ異次元金融緩和の行方が注目される2023年。「経済見通し」シリーズのトップバッターに立った白井氏は、新総裁の下での異次元緩和の「総括」を訴えた。11~16年まで金融政策を決定する日銀審議委員を務めた経験を持つ。初期の異次元緩和を支えた一人として、日銀への思いを語った。

 会見前半は、演題の通り、今年の経済について展望した。世界経済がインフレと金融引き締めで先進国を中心に大きく減速する中、日本はコロナ下で抑制されてきた設備投資やサービス消費にけん引され、米欧の成長率を上回るという。為替相場については、「もうそんなに円安にはならない」と言い切った。

 昨年12月、日銀は金融政策を修正。長期金利の変動許容幅をプラスマイナス0.25%から同0.5%に拡大した。市場は「事実上の利上げ」と受け止め、住宅ローン金利が上昇するなど影響が広がっている。黒田東彦総裁の任期は4月まで。次期総裁が異次元緩和を終えられるかどうかも焦点だ。

 後半の質疑応答では、日銀関連の質問が矢継ぎ早に飛んだ。昨年12月の政策修正については、「わたし自身、政策の持続性、柔軟性を高めるべきだと言ってきた。それと近い判断であり、政策の方向性としては正しかった」と評価した。

 当初は「お金の量」を大胆に増やし、現在は短期と長期の「金利の操作」に重きを置くなど、異次元緩和は10年間で大きく変貌した。白井氏は、低金利政策の抜本的修正に慎重な見解を示しつつ、「(政策が)複雑になった印象がある。新しい体制の下で、10年間のレビューをされたらいいのではないか」と語った。黒田総裁就任前だが、日銀執行部の現状維持案に納得できず、自ら政策変更を提案したこともある。臆することなく持論を説く姿は今も変わらない。


ゲスト / Guest

  • 白井さゆり / Sayuri SHIRAI

    慶應義塾大学総合政策学部教授

研究テーマ:2023年経済見通し

研究会回数:1

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