2022年12月16日 13:30 〜 15:00 10階ホール
「かかりつけ医を考える」(5) 堀真奈美・東海大学教授

会見メモ

医療政策、医療経済などを専門とする東海大学教授の堀真奈美さんが登壇し、かかりつけ医機能の整備を含めた医療提供体制の改革をテーマに話した。

 

司会 猪熊律子 日本記者クラブ企画委員(読売新聞)


会見リポート

複雑な全体像、国民的議論必須/メディアの役割に期待

前野 一雄 (読売新聞出身)

 60年以上続く国民皆保険を基盤にした日本の医療制度。世界に冠たる半面、硬直化した利害構造、環境変化に応じて政策を大きく変えることが難しい。未曾有の超高齢社会を前に▽医療機能の分化・連携▽医療・介護のシームレス化▽医療資源の有効活用▽医師偏在、マンパワー不足――。待ったなしの課題解決のカギが“かかりつけ医(プライマリ・ケア)機能”の実装化にほかならない。

 それにはステークホルダーの利益調整を超えた国民的議論が必要だが、全体像が複雑すぎて分からない。早急にかかりつけ医の定義、機能を法律上も明確にし、患者と医療者側の認識ギャップ解消に向けたメディアの責務を訴える。

 英国の公的医療保障であるNHS(国民保健サービス)の最新事情は新鮮だ。キャメロン政権以降の緊縮財政下でもNHSへの歳出は最重要事項とされてきた。第三者機関による認証・業績評価の導入により説明責任・透明性が確保され、国民の選択権が機能。NHS制度への国民の支持は高く、とりわけ若者層(15~34歳)の81%が「維持のため何でもすべき」と答えている。

 NHSシステムの多くは多職種のグループ診療であり、特定の医師をGP(一般診療医)として登録指定する制度ではない。また人頭払い的な要素だけでなく、成果払い、出来高払いも組み合わせている。

 GPの報酬は専門医と遜色ない水準で、ステータスも変わらない。外国籍医師が多い専門医に対し、コミュニティーで信頼されるGPに魅力を感じ志す英国医師が多い。日本の総合診療医、かかりつけ医のマイナーイメージとは雲泥の差のようだ。

 「英国民は専門病院や大病院に自由にかかれない不満がないのか?」との質問には、「かかるべき適切な医療機関が分からないからコンビニ受診になる」と、国際的に低い日本のヘルスリテラシーの向上にメディアへの期待を繰り返した。


ゲスト / Guest

  • 堀真奈美 / Manami HORI

    東海大学健康学部学部長、健康学部健康マネジメント学科教授

研究テーマ:かかりつけ医を考える

研究会回数:5

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