2022年08月10日 15:00 〜 16:30 10階ホール
「アフリカ開発の現場からーTICAD8を前に」(3) 薬師弘幸・国際協力機構(JICA)アフリカ部参事役兼計画・TICAD推進課長

会見メモ

国際協力機構(JICA)はアフリカの開発支援の最前線に立ち、アフリカ開発会議(TICAD)開始時から携わってきた。

TICAD推進課長を務める薬師弘幸さんがJICAによるアフリカの開発支援の現状などについて話した。

 

司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)


会見リポート

アフリカの潜在能力は人にあり

石黒 穣 (読売新聞能登支局長)

 アフリカの潜在力はどこにあるのか。薬師さんは言う。最大のリソースは一般に言われる鉱物資源ではなく人であると。

 大陸全体で13億人の現行人口は2050年に倍近い25億に増える見通し。そのときの平均年齢は25歳。2100年には43億人になって多少上がるがそれでも35歳だそうだ。若い労働力を生かし切れば確かにとてつもない経済力が期待できる。

 少子高齢化と人口減に歯止めがかからない日本を振り返ると絶望的な気持ちになる。私のように地方で勤務し、日々、小中学校の閉鎖に伴うニュースなどに接していると、アフリカの若者の10万分の1でもこちらに来てくれたらと妄想してしまう。

 JICAを通したアフリカ支援は薬師さんの説明を要約すれば、日本の成長そのものや、その前提の世界の安定のためアフリカの若い人材に直接、間接的に寄与してもらうための戦略的な投資ということになる。

 その額は年額2260億円(2020年度)。高いか安いかの質問に、薬師さんは「国民の理解に基づいて税金から出してもらっているので」と述べ、決まった枠内で最大限の効果を目指していると強調した。

 「安い日本」が言われるようになった昨今、どこまで大盤振る舞いの対外援助を続けるのかと批判めいた声が強まっているのも当然意識しているだろう。最低時給が800円台の土地にいると、先にケアが必要なのは日本の方だという主張にうなずけるところがあるのも事実だ。

 地方で取材すると、国や自治体の地域活性化のメニューはどれも力不足と実感する。本気で地方をどうにかしようと考えるなら、外から人口そのものを注入するしかない。有望な移民人材がアフリカにはいる。JICAの活動を将来の移民政策の転換まで見据えた布石ととらえれば、援助額はもっと多くていい。


ゲスト / Guest

  • 薬師弘幸

    国際協力機構(JICA)アフリカ部参事役兼計画・TICAD推進課長

研究テーマ:アフリカ開発の現場からーTICAD8を前に

研究会回数:3

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