会見リポート
2022年03月17日
13:30 〜 14:30
10階ホール
「五輪後のスポーツを考える」(1) ドーピング問題 浅川伸・日本アンチ・ドーピング機構専務理事
会見メモ
世界アンチ・ドーピング機構(WADA)の教育啓発活動にも参加する浅川伸・日本アンチ・ドーピング機構専務理事が、冬季五輪北京大会女子フィギュアスケートでのカミラ・ワリエワ選手問題を例に、その経緯とどこがなぜ問題になったのかを解説した。
司会 森田景史 日本記者クラブ企画委員
会見リポート
「ぶれ」生じた裁定に危機感
川島 健司 (読売新聞社編集委員)
北京冬季五輪で最大の事件は、フィギュアスケート女子の絶対的な優勝候補だった15歳、カミラ・ワリエワ選手(ROC=ロシア・オリンピック委員会)のドーピング検査違反だった。昨年の東京五輪・パラリンピック後のスポーツを考えるシリーズ企画の1回目として、この問題について日本アンチ・ドーピング機構の浅川伸専務理事が解説した。
大会序盤の団体で、ROCの金メダル獲得に貢献したワリエワだったが、直後に、昨年12月の国内大会で禁止薬物への陽性反応が出ていたことが分かった。ロシアのアンチ・ドーピング機関はワリエワの以降の今大会への出場を禁止したものの、本人らの聴聞会の結果、処分は暫定的に解除された。これに対し、国際オリンピック委員会(IOC)などはスポーツ仲裁裁判所(CAS)に不服を申し立てたが、CASはこれを棄却し、個人戦への出場を認めた。
結局、ワリエワは個人フリーでミスを連発し、4位に終わったが、規則に違反した選手が出場し続けられたことに納得いかない人も多かった。
浅川氏は資料を用意し、多くの関係機関が略称と共に登場する複雑な事件を分かりやすく解説。16歳未満の「要保護者」であることなどを理由に大会参加継続を認めたCASの裁定に関し、ワリエワを出場停止とすることで生じる可能性のある「取り返しのつかないダメージ」よりも、スポーツの公平性が優先されるべきだったのではないか、と批判した。
今回争われたのは、参加継続が認められるかであり、ワリエワの違反自体については、処分の結論が出ていない。「そもそも陽性反応の通知を受けたアスリートの事案であり、アンチ・ドーピング規則を中心に置いて、そこから1㍉もずらさずにぶれない裁定を導くべきだった」という言葉に、「要保護者」を理由に違反事案への対応があいまいになりかねないことへの危機感が感じられた。
ゲスト / Guest
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浅川伸 / ASAKAWA Shin
日本アンチ・ドーピング機構専務理事 / managing director, Japan Anti-Doping Agency
研究テーマ:五輪後のスポーツを考える
研究会回数:1