2022年02月16日 14:30 〜 15:30 オンライン開催
「脱炭素社会」(4) 池辺和弘・電気事業連合会会長

会見メモ

電気事業連合会の池辺和弘会長(九州電力社長)が福岡からリモートで会見し、2050年のカーボンニュートラル実現に向けた電気事業者の取り組みを話した。

「需給両面の対策が必要。どちらか一方だけでは達成は難しい」。二酸化炭素(CO2)排出量を部門別で見た場合、エネルギーの供給側が4割、エネルギーを使用する産業、運輸、家庭部門などが6割に相当する。供給側として電源の脱炭素化を進めることに加え、需要側の電化を推進することがカギになるとの見方をあらためて示した。

電源の脱炭素化では、再生可能エネルギーの主力電源化を進めると強調。一方で主に太陽光で生じる出力変動を補うためにも「一定規模の火力発電が必要」との見方を示した。

原子力については「脱炭素電源として確立した技術」と説明。またウクライナ危機を踏まえ「エネルギーセキュリティーはナショナルセキュリティーという意識は高まっている。(安全保障の点からも)一番良い方法は原子力の再稼働を進めること。原子力のベネフィット、リスクを議論すべきときではないか」。

 

司会 小林伸年 日本記者クラブ企画委員(時事通信社)


会見リポート

原発最大限の活用を強調

香取 啓介 (朝日新聞社科学医療部)

 パリ協定以降、各国が社会の脱炭素化に向けてスピードを強めている。日本も2020年10月に、2050年のカーボン・ニュートラルを宣言した。重要になってくるのが、日本の温室効果ガスの8割以上を排出するエネルギー部門だ。

 電源の脱炭素化では、国際社会で大きく位置づけが揺れている原子力発電と石炭火力発電の扱いが焦点になっている。池辺氏は「エネルギー事業者として現実的な道筋を示す」と切り出した。

 原発の活用は、東京電力福島第一原発事故もあり、国民の中で否定的な意見がある。池辺氏は、運転時にCO2を出さない原発は重要な役割を果たすとして最大限の活用を強調。「新増設やリプレースの結論を出すのは今だ」と国に明確なメッセージを出すよう求めた。原発の継続と核燃料サイクルは不可分だという。運転期間の延長へも期待を寄せた。

 一方の石炭火力。排出量が多く、各国が将来的な廃止計画を次々に表明しているが、池辺氏は「将来的にもなくすのは現実的ではない」。アンモニアや水素を混焼することで排出量を減らしながら使うという。技術は確立しておらず、コストも見通せないが、池辺氏は、「コスト面だけではなく、再生可能エネルギーの調整電源になる」「電力の安定供給を脅かしてはいけない」と述べた。

 社会の脱炭素には発電所だけではなく、自動車などの運輸、オフィスや家庭、産業など「使う」側の取り組みも不可欠だ。岸田首相も昨年12月の所信表明で「社会のあらゆる分野を電化させることが必要」と述べている。

 池辺氏は、冷暖房のヒートポンプへの置き換えなどを例に、政府が初期費用や技術開発を補助するなどの仕掛けが必要だと指摘。「国民のライフスタイルや社会のあり方を脱炭素に切り替える、全員参加のカーボンニュートラルを」と呼びかけた。


ゲスト / Guest

  • 池辺和弘 / Kazuhiro Ikebe

    電気事業連合会会長 / Chairman of the Federation of Electric Power Companies(FEPC)

研究テーマ:脱炭素社会

研究会回数:4

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