2021年10月19日 14:00 〜 15:00 10階ホール
「アフガニスタン」(4) 藪崎拡子・赤十字国際委員会前カンダハール地域事務所副代表

会見メモ

2019年8月から今年の9月30日まで赤十字国際委員会(ICRC)カンダハール地域事務所副代表を務め、10月1日に帰国したばかりの藪崎拡子さんが、アフガニスタンの状況を報告した。

 

司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)


会見リポート

タリバン復建、劇的悪化なし

大内 佐紀 (読売新聞社調査研究本部主任研究員)

 米軍撤退に揺れるアフガニスタンでの25カ月の勤務を9月末に終え、帰国した。ICRCはアフガン20カ所の拠点に95人の外国人と約1700人の現地スタッフが医療を中心とした人道支援を継続している。自前の飛行機2機もあり、帰国にあたって南部カンダハルからタジキスタンに出るのは何の問題もなかった。

 新型コロナウイルスによる移動規制もあり、「現地にべったり」という生活の中、8月中旬、アフガン政府軍の戦車が事務所周辺を取り囲み、建物が揺れるほどの激しい銃撃戦があった。ところが、戦車は10分ほどであっけなく姿を消す。しばらくすると、タリバン兵が行進し、そのパレードに市民が徒歩や自転車で続いた。タリバンが発祥の地であるカンダハルを再掌握するのを目の当たりにした現地スタッフが「信じられない。こんなに早く…」と青ざめた顔でつぶやいた。

 しかし、タリバンが戻って来たところで、「何かが劇的に悪化したということはない」というのが現地での率直な感想だ。メディアでは女性の権利抑圧などが伝えられるが、「急に女性の立場が悪くなったとも思わない。例えば保守的な南部では女性スタッフが親族の男性に付き添われるのは以前から当たり前だった」と話した。

 ICRCは紛争地で全当事者と対話することで支援活動の領域を広げてきた。藪崎さんも毎日のようにタリバンと交渉し、「普通の役人と同じ」との印象を持つ。だから「タリバンは残虐で恐ろしい」というイメージには違和感を覚える。

 むしろ、恐ろしいのはアフガンが国際社会から忘れ去られることだ。「今の注目はいつまでも続かない」との指摘は、この20年間のアフガン報道を思えば、筆者にとっても耳が痛い。

 アフガンの人々にとって、厳しく、辛くなるであろう冬が迫っている。


ゲスト / Guest

  • 藪崎拡子

    赤十字国際委員会前カンダハール地域事務所副代表

研究テーマ:アフガニスタン

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