会見リポート
2021年09月24日
11:00 〜 12:00
オンライン開催
川本裕子・人事院総裁 会見
会見メモ
川本裕子・人事院総裁が、今年8月に国会・内閣へ示した人事院勧告・報告について話した。
司会 藤井彰夫 日本記者クラブ企画委員長(日本経済新聞)
会見リポート
霞が関の働き方に規律求める
大林 尚 (日本経済新聞社編集委員)
川本氏は企業の社外取締役などとして、長年にわたって独立した視点から組織経営に規律を求めてきた。その体験をもとに、めざすべき霞が関の働き方改革を明快に話した。三つ挙げる。
まず、役人の働き方は「時間コストの概念が特に弱い」。たとえば子育てとの両立には「どれだけ短時間で最大の成果を出すか」がカギになる。それは、父か母かを問わず同じことだ。子育てに限らず、ふだんから問われる課題でもある。
次に「女性は実績で、男性は可能性で判断されると言われてきたが、女性も可能性で評価されるべきだ」。女性だからといって遠慮せず、重責を担うのを当たり前にする文化の醸成である。組織にこびりついた思い込みを取り除け、というメッセージだろう。
そして「上司からのフィードバック・カルチャーの確立」だ。自分が成長した実感をつかめない若手公務員の悩みに触れつつ「目標を定め、達成を実感する」積み重ねが必要だと語った。
元官僚が著した『ブラック霞が関』が話題だ。人事院は公務を志す学生の急減に直面している。
ホワイトな環境をととのえるのが喫緊の課題だが、官僚以外の職種をめざす若者が増えた背景には、ブラック化のほかにも構造問題が潜んでいるとみるべきだろう。
ある大学教授に「官僚志望生はプロジェクト志向が強くなっている」と聞いたことがある。カーボンゼロ、人口減少時代の国土計画、年金・医療改革など政策や制度を究めたいという志だ。
その時々の問題をそつなくこなし、霞が関ばかりか永田町でも重用されてきた調整型・万能型の行政官とは、ひと味違う官僚像である。
川本氏が指摘した三つの働き方改革の延長線上には、プロジェクト志向の若手が存分に働ける組織文化を育てる大仕事が待っている。この野心的な改革に「一肌脱ぎたい」という幹部公務員が各府省に健在であってほしい。
ゲスト / Guest
-
川本裕子 / Yuko Kawamoto
人事院総裁 / president, National Personnel Authority