2021年09月24日 15:00 〜 16:30 オンライン開催
「サイバー社会」(2) 矢野和男・日立製作所フェロー

会見メモ

日立製作所は幸福度計測技術を事業化した新会社「ハピネスプラネット」を昨年設立した。

同社の代表取締役CEOも務める日立製作所の矢野和男フェローがA Iを使った生産性向上技術などについて話した。

 

司会 中山淳史 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞)

 

 ※本会見の動画はYouTubeに公開しません。


会見リポート

生産性向上は能力より幸福度

田井 誠 (共同通信社地域報道部デジタル庁担当)

 「率直に発言できる組織は、生産性が高い」。日立製作所フェローの矢野和男氏の主張は、明快で分かりやすい。企業価値を高めるためには、社員の肉体だけではなく、精神面の健全性確保にも一層目を向ける必要があると訴えた。当然かもしれないが、人の幸福度を計測する独自アプリを開発し、組織運営の改善手法も編み出している。

 日立製作所で半導体事業に長く携わった矢野氏は、部門縮小に伴い、それまでのキャリアを投げ打ってコンピューターの将来に賭けた。大量のデータを活用して、人々の幸福度を高めたい、そんな思いでたどり着いたのは、2020年7月のIT関連企業「ハピネスプラネット」の立ち上げだった。

 同社社長として、さまざまな企業の幸福度を高めるプロジェクトに関わっている矢野氏。「幸せな人が多い会社では、そうでない会社と比べ、一株あたりの利益率が高い」と主張。米IT大手グーグルでは、知能指数が高い人でつくるグループではなく、率直にものを言えるチームの生産性が高かったという。こうした調査結果を引き合いに、個々の社員の能力はそれほど重要ではないと指摘。「幸せな組織は率直にものが言える」と強調した。

 人の幸福度を重視した企業経営は、今後一層普及し、「あらゆる事業、投資の判断、商品の性能、教育の仕方」などが人の幸せにプラスかどうかを考慮した上で、決まるような「大きな変革」が進むと予見している。

 こうした考えは「宗教じみている」などと批判にさらされることもあったが、新型コロナウイルス禍でテレワークが普及し、社員間の意思疎通が取りにくくなった結果、重要性が再認識された。テレワーク環境下では「相当意識して、(社員の孤立を)防ぐ仕組みを作らないといけない」と警鐘を鳴らし、ウィズコロナ時代に適応した新たな組織の在り方を求めた。


ゲスト / Guest

  • 矢野和男 / Kazuo Yano

    日立製作所フェロー

研究テーマ:サイバー社会

研究会回数:2

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