会見リポート
2021年09月10日
13:30 〜 15:00
オンライン開催
「入管問題」弁護士 指宿昭一さん
会見メモ
名古屋出入国在留管理局の施設でスリランカ人ウィシュマ・サンダマリさんが亡くなった問題は、日本の入管政策が抱える問題点をあらためて浮き彫りにした。
ウィシュマさんの遺族代理人を務め、労働事件(労働者側)・入管事件を専門とする弁護士の指宿昭一さんが、ウィシュマさんを巡る入管問題の経緯、問題点を説明するとともに、歴史的な流れ、入管政策・入管法の問題点、今後の課題などについて話した。
指宿さんは「多文化共生をもとにした在留管理をすべき」と強調。ウィシュマさんの問題に市民の関心が高まっていることについて「希望を見ている」と述べるとともに、メディアに対しても継続し、入管の実態を伝え続けてほしいと要望した。
司会 保高睦美 日本記者クラブ企画委員
会見リポート
「徹底管理」の意識いまなお
井田 香奈子 (朝日新聞論説委員)
雇用主による虐待や強制労働など外国人技能実習生をとりまく労働問題への実践を評価され、7月、米国務省から「人身売買と闘うヒーロー」に選ばれた。
いま取り組むのが、名古屋入管に収容中に亡くなったスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんをめぐる問題だ。遺族代理人として、法務・入管当局に真相解明と説明責任を求める人々の先頭に立ってきた。
会見があったのは、ウィシュマさんへの処遇を記録した映像の開示にあたり、2人の妹が求めていた指宿さんの立ち会いを、入管側が拒んだ日だった。保安上の理由などと告げられたが、「(当局の)保身上の理由」と受け取ったと話した。
病状が進むなか、仮釈放はおろか、点滴も受けられなかった。「貧しい国の人だから、このようなことをするのか。アメリカ人でも同じことをするのですか」。名古屋入管局長に、ウィシュマさんの妹が尋ねたのが忘れられないという。「こう言われても仕方のないことを、入管はしてしまった」
戦前は、外国人や植民地の人たちの管理を特高警察が担っており、その「徹底管理」の意識が引き継がれてきた歴史にも言及した。在留管理は外国人嫌悪に基づくものであってはならず、多文化共生を実現しつつ進めるもの、と強調した。
ウィシュマさんの死をきっかけに外国人の収容のあり方を問い直す声が高まり、通常国会で審議が進んでいた入管法改正案は事実上の廃案に追い込まれた。ただ、背景には2019年、長期収容に抗議したナイジェリア人男性のハンスト死があったにもかかわらず、入管当局に強い裁量をとどめた法案の問題点は、当初きちんと報道されてはいなかったと考えている。
「外国人の問題に市民は関心がない、むしろ反発を招く、という誤った認識が、メディアにあったのではないか」。この言葉を率直に受け止めたい。
ゲスト / Guest
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指宿昭一 / Shoichi Ibusuki
弁護士(暁法律事務所所長) / attorney at law
研究テーマ:入管問題