2021年09月03日 13:30 〜 15:00 オンライン開催
「新・国際課税ルール」(4) 関口智・立教大学教授

会見メモ

関口智・立教大学教授が、G20などが大枠合意をした新たな国際課税ルールを踏まえ、法人税改革に関するアメリカでの論議や歴史的変遷などについて話した。

司会 小竹洋之 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞)


会見リポート

最低税率統一を/求められる経済大国の働き掛け

堀 義男 (時事通信社出身)

 世界的な法人税引き下げ競争の中で、法人税率は限りなくゼロに近づいていく―。十数年も前、経済産業省幹部はこう言い切った。海外からの投資を獲得するため、「法人税率引き下げドミノ」が日本を含めた主要国でも避けられない、というのが理由だった。

 見通しは的中した格好で、その後も国際的な法人税の引き下げ競争が続いた。さらに、デジタル経済の急進展を背景に、「GAFA」など「プラットフォーマーと呼ばれる新たな独占的企業の出現」(関口教授)が加わり、デジタル課税体系の整備も喫緊の課題に浮上した。

 今回の国際課税ルールの合意について、関口教授は「特権説」や「政府出資者説」など米国を中心にした法人税に関する歴史的な論議も交え、難しい問題を極力、分かりやすく解き明かすよう試みた。

 なじみの薄い用語が散見され、内容面で追い付けない部分もあったのは、筆者の不徳の致すところだ。だが、関口教授の話から、経済のグローバル化やデジタル化が強く迫った国際法人課税体系の再構築が、今回の合意によって大きく前進したと改めて確認できた。

 法人税の共通最低税率を「15%以上」とした合意内容に対しては、現在12.5%のアイルランドなど低税率諸国に反発が残る。また、フランスやスペインなどが課す独自のデジタル課税の見直し問題も、今後の波乱要因としてくすぶっている。

 関口教授は「(最低税率が)統一していないと歪みが生じ、タックスプランニングが起きる。経済規模の大きな国が参加することで、(統一を)働き掛けていくことが求められる」と指摘。また「各国独自のデジタル課税は極めて限定的にすべきだ」との考えも示した。

 筆者が今回の合意に関し抱いていた疑問への明快な回答になり、その点も大きな収穫だった。


ゲスト / Guest

  • 関口智 / Satoshi Sekiguchi

    立教大学教授 / Professor, Rikkyo University

研究テーマ:新・国際課税ルール

研究会回数:4

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