2021年07月07日 13:30 〜 15:00 10階ホール
「官僚と政治」(2) 松井孝治・慶應義塾大学教授

会見メモ

「官僚と政治」の第2回ゲストとして、慶應義塾大学の松井孝治教授が登壇し、統治機構のあり方について話した。

松井さんは通商産業省(現経済産業省)出身。内閣副参事官などを経て、2001年参議院議員。鳩山内閣で内閣官房副長官(09~10年)を務め、13年に政界を引退した。

官僚として「橋本行革」に携わったほか、参議院議員時代には国家公務員法制度改革基本法の審議で、民主党の対案作成、修正協議の実務を担当。内閣人事局設立の原案段階の交渉にも関わるなど、官僚・議員時代を含め一貫して政治・官邸主導を推進してきた。

司会 川戸惠子 日本記者クラブ企画委員(TBS)


会見リポート

「政治主導」の官僚統制に「現場目線」の評価対置を

清水 真人 (日本経済新聞社編集委員)

 通産官僚出身の元民主党参院議員で、鳩山由紀夫内閣では官房副長官も務めた。2001年に中央省庁の再編を実現した「橋本行革」の発案者として知られる。

 橋本行革では経済財政諮問会議の創設など首相を中心とした「内閣主導」の統治を目指した。「明治以来の行政各部中心主義、縦割りの政官業複合体による利害調整への強い問題意識からだった」と振り返った。

 傑出した官房長官と言われた後藤田正晴氏でさえ、内閣に対する行政各部の自律性を重んじる点で「守旧派官僚の感覚だった」と指摘した。

 民主党への政権交代を目前にした2008年に、国家公務員制度改革基本法を巡る与野党修正協議も担当した。「組織は小ぶりでも首相と官房長官に直属する内閣人事局」を発案したのは自分だと明かして「人事局が諸悪の根源で、その根源は松井だと思っている人もいる」と漏らした。

 修正協議で、自民党の宮沢洋一氏は、官邸が人事を一元管理する幹部官僚は「70~80人程度にとどめるべきだ」と唱えたそうだ。松井氏は「全てを官邸が見ようとしても、回らない」と同意したうえで「財務省の主計局次長などの重要ポストは局長級でなくても対象にすべきだ。網は広げてほしい」と求め、現在の部長・審議官級まで広がったという。

 当時の渡辺喜美行革相が構想した官僚と与党の接触制限は「民主党政権が目前で、骨を抜いた」と認め、採り入れるべきだったと反省した。

 安倍晋三内閣で「人事に巧みな菅義偉官房長官の下で人事局が始動した」事情に加え、安倍・菅ラインは不動のまま閣僚はどんどん交代させたため、閣僚の人事権が形骸化して官邸に実権が移った、と分析した。

 選挙で勝った短期的な民意を背にした「政治主導」による官僚統制に対し、官房副長官(事務)や一群の内閣官僚による中長期の「現場目線」からのフェアな評価を対置させバランスを回復すべきだと訴えた。


ゲスト / Guest

  • 松井孝治 / Koji Matsui

    慶應義塾大学総合政策学部教授 / (一財)創発プラットフォーム 理事兼主幹研究員 / professor, Keio University

研究テーマ:官僚と政治

研究会回数:2

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