2021年04月30日 13:00 〜 14:30 オンライン開催
「バイデンのアメリカ」(5) “対中同盟としての日米同盟”と日本の安全保障 神谷万丈・防衛大学校教授

会見メモ

国際政治学、安全保障論を専門とする防衛大学校教授の神谷万丈(かみや・またけ)さんが登壇し、「“対中同盟としての日米同盟”と日本の安全保障」をテーマに、この間の日米同盟の変化や日本の課題などについて話した。

司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)


会見リポート

日本、米国の筆頭同盟国に/対中で問われる日米協調

大内 佐紀 (読売新聞社調査研究本部主任研究員)

 バイデン米大統領にとって、初の対面での首脳会談となった4月の菅首相との協議で何か印象的だったか。神谷教授は、日米同盟が中国をにらんだものに明確に変質し、米国にとって日本の重みが増した点だという。

 日米同盟は冷戦時代はソ連を警戒対象としていたのが、ポスト冷戦期に「特定の国に向けたものではない、地域の『安定化装置』」と再定義された。それが、米国主導の国際秩序を覆そうとする中国の動きが深刻化する中、日米が手を携えて中国に勝利するため共闘することが確認されたのだ。

 米国から見た同盟国・日本の存在意義も変わった。米国が守る存在から対等のパートナーで頼れる相手となり、いわば「筆頭格」の同盟国に位置づけられた。

 背景にあるのは、米国が世界の難題に単独では対処できないとの自覚を強め、協力する相手を求めるようになったことだ。そしてバイデン政権は、米中関係を自由主義と専制主義の体制間競争と定義する。

 日米共同声明には、この競争に向け、「日本が自らの防衛力を強化する」という決意が盛り込まれた。神谷教授は、米国は日本の具体的行動を注視しており、日本は防衛費増加などに務める必要があると指摘した。

 神谷教授はまた、日本には、「米中対立」の外にいるのではなく、中国との対立の当事国であるという意識を持つことが求められていると強調した。台湾有事であれ、香港や新疆ウイグル自治区での人権抑圧であれ、「『米中の軋轢に巻き込まれたくない』というのはムシが良すぎる態度だ」というわけだ。先端技術など経済安保に関わる分野でも、中国に対抗するため、どこまで日米が協調できるかが問われているという。

 「自由で開かれたインド太平洋」という目標のため、やむを得ない場合には米国と連携し、断固たる態度を取るという姿勢を日頃から明確にする――。神谷教授によると、これが今、日本に求められている。


ゲスト / Guest

  • 神谷万丈 / Matake KAMIYA

    防衛大学校教授 / professor, national defense academy

研究テーマ:バイデンのアメリカ

研究会回数:5

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