2020年11月02日 16:00 〜 17:00 10階ホール
スウェーデンのコロナ対策 アンデシュ・テグネル氏、ペールエリック・ヘーグベリ駐日大使 会見

会見メモ

新型コロナウイルスの感染拡大に対し、スウェーデンは長期にわたる持続可能な対策が必要との観点から都市封鎖のような厳格な規制は敷かず、独自のコロナ対策を講じてきた。

政府のコロナ対策責任者であるアンデシュ・テグネル氏とヘーグベリ大使が会見し、いまの感染状況や自国の対策への評価、今後必要となる施策などについて話した。

テグネル氏はスウェーデンからオンラインで参加した。

司会 村山知博 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞)

通訳 池田薫(サイマル・インターナショナル)

 

写真左からテグネル氏、ヘーグベリ氏


会見リポート

国民の信頼あっての独自対策

安藤 淳 (日本経済新聞社編集委員兼論説委員)

 スウェーデンは新型コロナウイルス対策で都市封鎖(ロックダウン)のような厳しい措置をとらず、人々は感染症が広がる前とそれほど変わらない生活を送ってきた。しかし、最近は感染者の増加ペースが速まり、会見から少したって政府は行動制限を強化した。

 テグネル氏(右)は、これまで対策への批判が少なく混乱も起きていなかった背景に「国民と政府との間の強い信頼関係」があると説明した。きれい事にも聞こえるが、数百年の歴史のなかで醸成され、新型コロナ拡大後に一朝一夕に実現したのではないと強調した。

 初期に死者が増えたのは、高齢者施設におけるケアの質にもともと問題があったからで、国民も説明を聞いて納得したという。ただ、かつて同国の高齢者施設を取材し、その質の高さを担当者に繰り返し聞かされた経験からは、やや意外な感じもした。

 スウェーデンではほとんどの人がマスクをせずに過ごしてきた。「必要がないので勧めてこなかった」とテグネル氏は言明した。一方で、多くの人がソーシャル・ディスタンス(社会的距離)の確保に気をつけ人混みを避けていると語った。

 スウェーデンは感染者が増えるにまかせ、集団感染を目指しているとの見方もあるが、テグネル氏はこれを明確に否定した。抗体保有率は比較的高いストックホルムでも30%程度で、郊外は4〜5%にとどまり集団免疫からはほど遠い。ただ、抗体保有者が増えれば感染拡大の速度は遅くなるとの期待を示した。

 この冬の感染状況はどうなるか。スウェーデンでも感染者が急増している地域があり心配だという。「スウェーデンと似たコロナ対策で成功している日本に注目している」。テグネル氏とヘーグベリ駐日大使は口をそろえたが、本当に「成功」と言えるのは、この冬を無事に乗り切れてからだろう。


ゲスト / Guest

  • ペールエリック・ヘーグベリ / Pereric Högberg

    スウェーデン / Sweden

    駐日大使 / Ambassador

  • アンデシュ・テグネル / Anders Tegnell

    スウェーデン / Sweden

    / State epidemiologist, Public Health Agency

研究テーマ:スウェーデンのコロナ対策

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