会見リポート
2020年09月25日
11:00 〜 12:00
10階ホール
「新型コロナウイルス」(45) 医療提供体制についての緊急提言 小宮山宏・元東京大学総長ほか
会見メモ
小宮山宏・元東大総長を座長とする有志が、コロナ禍における医療提供体制についての提言を発表した。
医療崩壊阻止と経済社会活動の維持のために、コロナ専門病棟・非コロナ病棟に分けての連携や開業医の活用、迅速な検査を行うための体制整備、接触確認アプリの普及促進策を提唱するもの。
有志のうち、小宮山氏と小林慶一郎・東京財団政策研究所研究主幹、井伊雅子・一橋大教授、大橋博樹・多摩ファミリークリニック院長、湯﨑英彦広島県知事がオンラインで会見した。
司会 猪熊律子 日本記者クラブ企画委員(読売新聞)
写真左から小宮山宏氏、小林慶一郎氏、井伊雅子氏、大橋博樹氏、湯﨑英彦氏
会見リポート
検査体制増強など6項目提案
木村 達矢 (読売新聞社科学部)
新型コロナウイルス感染症で、秋冬シーズンに感染者が急増し、医療体制が逼迫することが心配されている。しかし、不安だからとむやみに外出を自粛したり、過剰な対策を連発したりするだけでは、経済への影響は甚大となる。三菱総合研究所の小宮山宏理事長を座長とする「コロナ危機下の医療提供体制と医療機関の経営問題についての研究会」は、このような問題意識から緊急提言をまとめた。
提言は、医療関係者、経済学者、工学者ら異分野の有識者が議論を重ね、まとめられた。会見で、井伊雅子・一橋大教授は、2~6月に新型コロナ感染者の入院を受け入れた病院は約6割で、受け入れた病院の一般病棟稼働率は5月段階で約62%にとどまったとの調査結果を明らかにし、「必ずしも逼迫していた状況とは言えない」と指摘した。一方で、受け入れ病院では非受け入れ病院よりも収益の悪化が大きく、「積極的な財政支援が必要」と強調した。
研究会の提言は6項目からなり、①医療機関の集約化・役割分担・連携②診療所などの活用③医療機関へのメリハリのある財政支援④検査体制の増強⑤高リスク者を重点的に守る⑥正確な情報発信と感染者への偏見・差別・社会的非難の防止――を挙げている。提言では、感染が拡大し、行動抑制の強化が必要になった場合でも、広範な自粛・休業ではなく、特にリスクの高い場所や業種に絞り込むよう求めた。
経済学者の小林慶一郎・東京財団政策研究所研究主幹は、「接触確認アプリの普及が7~8割を超えれば、流行の封じ込めが可能」と述べ、アプリ普及強化やデジタル技術の活用を訴えた。
日本はこれまで、欧米に比べ感染者数、死者数とも低く抑えられている。科学的分析を深め、合理的で将来誇れる新型コロナ対策の「日本モデル」の構築が求められる。
ゲスト / Guest
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小宮山宏 / Hiroshi Komiyama
日本 / Japan
元東京大学総長、三菱総合研究所理事長 / former president of Tokyo University / chairman of Mitsubishi Research Institute
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小林慶一郎 / Keiichiro Kobayashi
日本 / Japan
東京財団政策研究所研究主幹 / Research Director, Tokyo Foundation for Policy Research
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井伊雅子 / Masako Ii
一橋大学国際・公共政策大学院教授 / Professor, School of International and Public Policy, Hitotsubashi University
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大橋博樹 / Hiroki Ohashi
多摩ファミリークリニック 院長 / Doctor, Director, Tama Family Clinic
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湯﨑英彦 / Hidehiko Yuzaki
広島県知事 / Governor, Hiroshima Prefecture
研究テーマ:新型コロナウイルス
研究会回数:45