2020年07月08日 15:30 〜 17:00 10階ホール
イナ・レーペル駐日ドイツ大使 会見

会見メモ

写真左からイナ・レーペル大使、ローター・ヴィーラー ロベルト・コッホ研究所所長

 

イナ・レーペル大使が、ドイツにおける新型コロナウイルス感染症対策の経過と現状および経済への影響、また7月から議長国を務めるEUの課題について話した。

質疑応答では、ロベルト・コッホ研究所のローター・ヴィーラー所長がドイツからリモートで登壇した。

 

司会 土生修一 日本記者クラブ専務理事・事務局長


会見リポート

PCR検査能力、週110万件

高野 弦 (朝日新聞社フォーラム事務局フォーラムディレクター)

ドイツではこのところ、日本などアジア地域にコロナ禍の対応策を見習うべきだ、との声が出ている。感染者、死者の数が相対的に低く抑えられているためだ。しかし、レーペル大使(右)や、ネット中継で参加したロベルト・コッホ研究所のローター・ヴィーラー所長からは、参考になる多くの話を聞くことができた。

 最初の感染例が確認されると、PCR検査の体制を急速に拡大、その能力は現在週110万件にのぼるという。大使は「PCRがドイツで開発されたことと無縁ではない」と謙遜気味に話したが、ヴィーラー氏は、感染者数の早期把握が重要であるとの認識のもと、全国の200の検査機関(ラボ)が当初から効果的に機能したことを理由に挙げた。

 ドイツでも専門家らが頻繁に会見して社会に警鐘をならしている。ヴィーラー氏は「政治サイドからの影響力の行使はなかった。意見や見立てをそのまま発信した。政治の側は政治の側で判断した」。大使は「政治も研究者サイドも極めて不完全な情報のなかで試行錯誤するしかないことを率直に認め、そのことが国民からの信頼を高めた」と語った。

 今年の経済成長率は前年比でマイナス6・2~7・0%になる可能性があるが、足元の失業率は前年比1・3%の上昇にとどまっており、大使は時短勤務制度の効果を挙げた。仕事が減ったからといって解雇するのではなく、時短で対応するもので、減収分の一部は政府が補塡する仕組みだ。ドイツはリーマン・ショックの不況時もこの制度で社会不安を乗り越えた経験がある。

 大使が最後に強調したのは国際協調の重要性だった。「日本と同様、ドイツもWHOを支えている。両国は自由な民主主義国として、開かれた社会が、危機を乗り越えた末により強くなれることを示すことができる」と締めくくった。 


ゲスト / Guest

  • イナ・レーペル / Ina LEPEL

    / Germany

    駐日ドイツ大使 / ambassador to Japan

  • ローター・ヴィーラー

    ロベルト・コッホ研究所所長

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