2019年10月02日 13:30 〜 15:00 10階ホール
「朝鮮半島の今を知る」(34) 和田春樹・東京大学名誉教授

会見メモ

慰安婦問題の解決のために アジア女性基金の経験から』(平凡社新書2015年)『北朝鮮現代史』(岩波新書2012年)など朝鮮半島関連の著作も多い和田教授が、日韓関係を振り返り双方の過ちを指摘しつつ、関係改善に向けての提案を話した。

司会 五味洋治 日本記者クラブ企画委員(東京新聞)


会見リポート

「日韓対立、『五輪休戦』で事態打開を」

青山 修二 (北海道新聞社東京報道センター次長)

 「(日韓関係の打開に向け)韓国側の対応が大きな意味を持っていると思う」。安倍晋三首相の外交政策に批判的な立場を取ってきた和田氏は、今回の講演では、韓国側の問題点も厳しく指摘した。

 和田氏は、河野談話や慰安婦問題を事実上否定しようとしてきた首相の姿勢が、過去20年にわたり、朝鮮半島との摩擦を生んできた経緯を説明。一方、首相が慰安婦問題について「日韓請求権協定で解決済み」と片付けずに、日韓合意に踏み切ったことを紹介しつつ、文在寅大統領に対して「合意を引き受ける責任を果たさず、日本国民の反発をかき立てた」と批判した。

 具体的には、日本政府が支払った10億円を元手に、35人の被害者にお金が支給されたことを発表しない韓国政府の姿勢を問題視。慰安婦問題を含め、請求権協定に納得できない被害者の要求を受けて、日本が努力した場合には、韓国が「しかるべき対応」を取ることが必要との考えを示した。

 日韓の間には、徴用工問題だけではなく、朝鮮人BC級戦犯問題などの歴史問題がまだ残っている。和田氏は、解決に向けた日本の努力と韓国の評価がセットになって初めて、両国が別の新たな問題の解決を模索する環境が整う、との考えを示したといえよう。

 徴用工判決を受け、年末には日本企業の財産の競売手続きが始まることが予想される。和田氏は「12月から東京五輪まで『オリンピック休戦期間』と宣言し、すべての措置を凍結し、交渉に努力することで合意する」ことを提案。さらに「『ゆがんだ歴史認識』と戦うのはマスコミや研究者の責任だ」と強調した。

 講演の最後に、和田氏は「もはや沈黙することは苦痛である」という自らのモットーを紹介した。この和田氏の発言には、アジアの平和のためには日韓両国で批判されることを覚悟の上で行動を続ける、という決意が込められていると受け取った。


ゲスト / Guest

  • 和田春樹 / Haruki Wada

    日本 / Japan

    東京大学名誉教授 / professor emeritus, Tokyo University

研究テーマ:朝鮮半島の今を知る

研究会回数:34

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