2019年07月18日 14:00 〜 15:30 9階会見場
「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」報告会見 プロジェクト代表 海部陽介・国立科学博物館人類史研究グループ長

会見メモ

3万年以上前に大陸から日本列島へ渡った人々はどのように海を越えたのか――。丸木舟を使い、その航海を5人の漕ぎ手により再現するプロジェクトが2019年7月7~9日に行われ、成功した。プロジェクトリーダーの海部陽介・人類研究部人類史研究グループ長と、漕ぎ手を務めた原康司さん(丸木舟キャプテン)、田中道子さん(舵取り)の3人が登壇。45時間10分(225キロメートル)の航海を振り返るとともに、航海の成功が何を意味するのかなどについて語った。

「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」と題したこのプロジェクトは2013年に海部代表が企画。2016年4月にクラウドファンディングが成功したことからスタートした。これまでに草、竹の船で試行したもののいずれも失敗に終わっていた。

 

 

司会 福田裕昭 日本記者クラブ企画委員(テレビ東京)

 

写真左から田中道子さん(漕ぎ手・舵取り)、原康司さん(漕ぎ手・丸木舟キャプテン)、海部陽介・人類研究部人類史研究グループ長

 


会見リポート

祖先の「海越え」を追体験

上田 俊英 (企画委員 朝日新聞社科学医療部)

 日本列島に最初に住んだ人々は、どうやって海を越えてきたのか。

 その謎の解明に挑む国立科学博物館のプロジェクトで7月9日、台湾から沖縄県・与那国島へ、丸木舟で渡る実験航海に成功した海部陽介さんらが、成果を報告した。

 いまから3万8千年前ごろ、日本列島に突然、人類が現れた。最初は大陸から対馬へ。そして3万5千年前~3万年前、琉球列島の島々に相次いで人類が出現する。

 「突然、ほとんどすべての島に人がいる。これは、ただごとではない。組織的に、人が島に渡り始めたのではないか」と海部さん。その驚きが実験航海企画のきっかけになった。

 当時は最終氷期で海面はいまより80メートルほど低く、台湾は大陸と地続きだったが、台湾の海岸から与那国島は見えない。しかも、その間の海には世界最大規模の海流、黒潮が流れている。

 「昔の技術で、どうやって渡ったのか。祖先たちが何をしたのかが体験的に分かれば、人間、ここまでできる、ということが見えてくるのではないか」

 それは、人類の海洋進出の歴史を知ることでもあるという。

 アフリカで誕生した人類が世界へ拡散していく過程で、海を越えた最古の証拠はオーストラリアにあり、4万7千年前ごろ。日本列島への進出もそれに次ぐ古さで、「人類の海洋進出の歴史を考えるうえで貴重な場所」だからだ。

 後期旧石器時代の当時の人々が入手できる材料と道具で舟をつくり、2016年にまず草舟で挑戦するも失敗。17、18年は竹舟で挑んだが失敗。丸木舟でついに成功した。

 5人のこぎ手で唯一の女性、田中道子さんは航海を通じて「(古代の人たちに)何かを見つけたいという強い意志があったのだろうと感じた」。キャプテンを務めた原康司さんは「長い旅の始まり」と言った。

 実際、実験航海は日本列島の端にたどり着いたばかりだ。


ゲスト / Guest

  • 海部陽介 / Yousuke Kaifu

    日本 / Japan

    国立科学博物館人類研究部人類史研究グループ長 / Department of Anthropology, Division of Human Evolution, The National Museum of Nature and Science

研究テーマ:3万年前の航海 徹底再現プロジェクト

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