会見リポート
2019年07月24日
14:00 〜 15:30
10階ホール
「大人がひきこもる社会」池上正樹・ジャーナリスト/伊藤正俊KHJ全国ひきこもり家族会連合会共同代表
会見メモ
「80・50問題」ともいわれる、ひきこもりの高年齢化が社会問題となっている。長年ひきこもり問題を追ってきたジャーナリストの池上正樹氏と、当事者と家族の支援団体「KHJ全国ひきこもり家族会連合会」の共同代表を務める伊藤正俊氏の2氏が登壇。「ひきこもり」が長期化する背景や孤立を防ぐ社会のあり方について話した。
池上氏は『大人のひきこもり』(講談社現代新書)、『ルポ ひきこもり未満』(集英社新書)などの著者で知られる。
司会 磯崎由美 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞社)
会見リポート
「困った人ではなくて、困りごとを抱えている人」
堀井 恵里子 (毎日新聞社くらし医療部)
引きこもっている人やその家族を長年取材してきた池上氏(左)は、当事者の内面について「人との交わりを避ける場所でしか生きられない、というのが実感」と語った。そして、この問題の本質は「社会的孤立」や「社会的排除」にあるという。私は、引きこもる要因を対人関係でのつまずきと捉えがちだったので、反省とともに考えさせられた。
川崎市でスクールバスを待っていた児童らが犠牲になった事件を巡る同市の対応や報道については、問題点が指摘された。一部テレビで「不良品」「モンスター予備軍」などの発言が放映されたことで、引きこもりの当事者や家族は「犯人と同一視され、怖い」「外にますます出られない」と感じ、不安定になって入院する人もいたという。
沈静化はしてきたが、引きこもっている人が「困った人ではなくて、困りごとを抱えている人」との認識はなかなか広がらないという。池上氏は「引きこもる要因を考えてほしい。100万人いれば、100万パターンの困りごとがある」と訴えた。
一部メディアで、悪質な引きこもり支援業者が、「支援の専門家」として紹介されていることも批判した。悪質業者を、本人の同意なく「支援」を押しつける▽自由を奪って「支配的な支援」を強要する―と定義し、注意を呼び掛けた。
これまでの行政の支援策については「成果を求める就労支援の失敗だった。恐怖、傷を負って引きこもっている人には、目的ある支援がなじまなかった」と分析した。
伊藤氏(右)は不登校や引きこもり、自殺などの相談に応じてきた経験から、「団塊の世代が残した問題が噴出しているのでは」と指摘。引きこもることについて「社会の状態とよくリンクしている。誰にでもどこからでも起きる。どう社会として受け止めるか。突き付けられているテーマではないか」と語った。
ゲスト / Guest
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池上正樹
ジャーナリスト
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伊藤正俊
KHJ全国ひきこもり家族会連合会共同代表
研究テーマ:大人がひきこもる社会
研究会回数:0