2019年06月26日 13:30 〜 15:00 10階ホール
「朝鮮半島の今を知る」(28) 韓国の対北朝鮮政策 崔完圭・元北韓大学院大学(韓国)総長

会見メモ

 北朝鮮研究の第一人者である崔完圭(チェ・ワンギュ)氏が北の視点から米朝交渉を解説した。昨年の南北・米朝首脳会談では「朝鮮半島の非核化」が共同宣言に盛られたが「米韓は北の核廃棄を指し、北朝鮮は米軍も含む半島全体の非核化を考えている。この食い違いがハノイ会談で表面化した」と指摘した。

 

司会 五味洋治 日本記者クラブ企画委員(東京新聞社)

通訳 崔銀珠

 


会見リポート

北朝鮮に「6Mシンドローム」も

田中 良和 (朝日新聞出身)

 劇的なトランプ米大統領と金正恩朝鮮労働党委員長の会談4日前に会見した韓国の北韓大学院大学の崔完圭・元総長は「北朝鮮の非核化を達成するためには、強大国である米国が雅量を見せてまず、譲歩すべきだ」と主張した。

 米国や韓国などがいう「北朝鮮の非核化」と北朝鮮のいう「朝鮮半島の非核化」とはどう違うのか。「北朝鮮の非核化」は、北朝鮮が開発している核物質、核施設、運搬手段を含む核に関連するすべてを除去、閉鎖すること。これに対して「朝鮮半島の非核化」は北朝鮮の非核化だけでなく、米韓などの対朝鮮敵対視政策を完全に放棄することまでを含む。

 崔完圭氏は、2003年12月16日に北朝鮮外務省の李根米州副局長が米国に送った文書や、2016年7月6日の北朝鮮政府報道官声明を基に、北朝鮮の非核化政策を①米国が朝鮮半島周辺に展開する核打撃手段を再び韓国に搬入しないと保証②米国が北朝鮮に核を使用しないと確約③韓国で核の使用権を持つ米軍の撤収――などと具体的に説明した。

 2018年9月、平壌で開かれた第三回南北首脳会談で文在寅・韓国大統領に随行したときの裏話を披露。印象に残ったのは、77人の随行員の中でも、特に財閥サムスングループ実質トップの李在鎔サムスン電子副会長ら経済人が優遇されたことだという。

 また、北朝鮮の最近の変化を示す言葉として「6Mシンドローム(症候群)」を紹介した。①Mobile(携帯電話)②Market(市場)③Money(金)④Motor(自動車)⑤Middleclass(中産階級)⑥Mindset(考え方)の6つ。北朝鮮では携帯電話の普及が600万台を超え、北朝鮮式市場が全国的に広がっているという。崔完圭氏は「このような変化から見ると、いくら金正恩委員長が全権を行使できるといっても、住民の期待や熱望に背を向けて過去に戻ることは極めて難しい状況だ」と診断した。


ゲスト / Guest

  • 崔完圭 / Choi Wan-kyu

    韓国 / South Korea

    元北韓大学院大学総長、信韓大学教授 / former president of the University of North Korean Studies, Chair Professor of Shinhan University

研究テーマ:朝鮮半島の今を知る

研究会回数:28

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