2019年05月31日 14:30 〜 16:00 9階会見場
「スーダン政変と民主化運動の行方」栗田禎子・千葉大学教授

会見メモ

スーダンでは民衆のデモが、30年間続いたバシール政権を解任に追い込んだ。

この政変を「非暴力デモで軍を動かし、30年続いた独裁を倒した4月政変は画期的事件」と評価。

軍と旧体制を分離させ、抜本的な民主化をめざし、デモは続行中。「民主派は、過去の経験から移行期の大切さを知っており、選挙を急ぐと旧勢力が勝利すると懸念している」

千葉大学文学部教員要覧

『中東革命のゆくえ : 現代史のなかの中東・世界・日本』(大月書店)

 

司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)

 


会見リポート

民衆と軍の「綱引き」続く

橋本 新治 (共同通信社外信部)

 軍のクーデターで長期政権が崩壊したスーダンはどこへ向かうのか。民主化を求める民衆のデモは遠からず、軍に力で抑え込まれるのだろう。そんな悲観論を抱いていたが、栗田氏の説明は必ずしもそうではなかった。スーダンには民主化運動の伝統があり、民衆は「どこか手慣れている」。軍が譲歩するか予断を許さないが、「何らかの落としどころ」を作る可能性はあるというのだ。

 昨年12月から地方都市で始まった民衆デモが拡大、軍を動かして30年続いたバシル大統領が4月に失脚した。しかし、栗田氏は「事態は現在進行形だ」と強調し、政権移行期の統治のあり方を巡って、民衆と軍の「綱引き」が続いていると語った。

 民衆に軍と綱引きができるだけの力があるのかと、素朴な疑問が浮かぶが、栗田氏は歴史を振り返りながら解説する。スーダンでは1964年と1985年にデモやストライキで独裁政権が倒れており、民衆には民主化運動の中で蓄積してきた経験とノウハウがあるのだと指摘した。

 イスラム主義勢力のクーデターで誕生したバシル政権は、強権的な警察国家として知られ、栗田氏は「宗教を徹底的に政治利用した軍事政権」と特徴付ける。政権崩壊後、民衆にとって最大の課題は、軍と旧体制をいかに切り離すかにあるという。

 外から見ていると、すぐ選挙を実施し、新政権を発足させればいいと思う。ただ、2011年の「アラブの春」で政権が崩壊したチュニジアやエジプトでは早期選挙の結果、組織力を持つイスラム勢力が躍進した。スーダンも早期選挙ではバシル政権を支えたイスラム勢力が「名前を変えて出てくる」だけだという。

 だからこそ民衆は移行期から文民統治を求め、デモやストライキを続けるのだ。デモのキーワードは当初の「平和」から「市民」に変わったという。栗田氏は、スーダンの民主化に希望を感じているようだった。


ゲスト / Guest

  • 栗田禎子 / Yoshiko Kurita

    千葉大学教授 / professor, Chiba University

研究テーマ:スーダン政変と民主化運動の行方

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