2019年06月21日 18:00 〜 20:00 10階ホール
2019年度日本記者クラブ賞受賞記念講演会 芹川洋一氏/リチャード・ロイド・パリー氏

会見メモ

2019年度日本記者クラブ賞を受賞した芹川洋一氏が平成の政治について、特別賞を受賞したリチャード・ロイド・パリー氏が日本のメディアについて語った。

 

司会 土生修一 日本記者クラブ事務局長


会見リポート

クラブ賞 芹川洋一さん

■平成政治を振り返る

 「象徴天皇制の始まり」「自民党単独政権の終わりの始まり」「失われた20年へ」など平成の地殻変動/六つの物語、「すべては1989年(平成元年)から始まった」―こう切り出した記念講演からは、同時代の優れた観察者の真骨頂が伝わってきた。

 芹川洋一氏は平成の30年間を、まず小選挙区制の導入や省庁再編・内閣主導の道を開いた橋本行革の「制度改革10年」、次いで官邸主導を実践した小泉改革や民主党の政権交代が実現した「制度活用10年」、そして民主党の短命政権後、「一強」政権を築いた安倍晋三首相がトリを務めた10年―その最終期を「運用失敗/問題露呈の10年」と断じた。令和に入り憲政史上最長記録に近づく安倍政権だが、小選挙区制による政治家の劣化、加えて政策決定での官邸独走。「政高党低」や霞が関の人事権掌握で可能になった「強すぎる官邸」にも弊害が生じている、と。その時、権力チェック機能としての報道リベラリズムを信奉する氏の眼が一瞬、鋭く光ったように見えた。

 政治(家)に接する時の「絶妙な距離感とバランス感覚」、それに裏付けられた分かり易い伝達力。さらに人間好き特有の旺盛な観察欲と嗅覚。その稀有な能力は、自民党担当時代、共に田中六助幹事長を追いかけていた時から筆者が感じていたものだ。

 芹ちゃん、受賞おめでとう。国会の廊下で先輩の六助氏に「日経の、田勢(康弘)たらんとする芹川です」と言って名刺を切っていた姿を昨日のことように記憶している。

専門誌「外交」前編集長 鈴木 美勝

 

特別賞 リチャード・ロイド・パリーさん

■対立し闘うことこそ報道

 大デモが続いた香港の取材から前日、帰ったばかり。話を受賞に導いた労作『津波の霊たち』ではなく、日本のジャーナリズムの在り方に向けた。

 自前の取材ヘリまで持つ大部数の新聞、巨大なNHKと全国完全カバーの地上波放送など日本のメディアの発達は比類ない、スタッフも多い。報道の自由もある。なのに戦場取材などで大手メディアは「リスクを避ける」。福島原発事故発生直後、南相馬市から取材陣がいなくなったことを疑問視した。権力者との向き合い方にも問題がある。「英国では記者はトラブルを起こすのが義務。権力者に恥をかかせるのが夢」という。皇室制度、警察取材、原発問題の扱いには「タブーがある」。

 報道は本来、権力者と対立する立場にある。権力者はそれを抑え込もうとするものだが、今は政府も自治体でも取材対象の方が攻撃的。とりわけ安倍政権はその不安を広げている、と指摘した。

 日本のジャーナリズムが、あまり闘わないのは国民性が対立を好まないから―それは違う、と明治以降の戦争体験や60年安保、成田空港反対闘争まで例示、最後に著書が取り上げた石巻市立大川小学校の被災児童の遺族らが立ち上がり一審勝訴した裁判を挙げ、その見方を退けた。

 在日報道四半世紀に及ぶ仲間からの、厳しい叱咤と受け止めたい。

朝日新聞出身 村野 坦

 


ゲスト / Guest

  • 芹川洋一

    日本経済新聞論説フェロー

  • リチャード・ロイド・パリー / Richard Lloyd Parry

    ザ・タイムズアジアエディター/東京支局長

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