2019年02月22日 15:30 〜 17:00 10階ホール
「統計不正問題の深層」(2) 田中秀明・明治大学教授

会見メモ

財務省出身の田中氏は、統計不正問題の背景に公務員の「政治化」があると指摘した。行政のトップである事務次官が不祥事の説明をしないことを疑問視し、事務次官を「名誉職」ではなく組織の責任者とするべきだと述べた。

司会 竹田忠 日本記者クラブ企画委員(NHK)

『官僚たちの冬 霞が関復活の処方箋』(小学館新書)


会見リポート

「調査手法は明らか不正、背景に行き過ぎた忖度」

田井 誠 (共同通信社経済部)

 「統計不正問題の深層」会見シリーズ第2回目は、『官僚たちの冬』を出版した元財務官僚の田中秀明氏を迎えた。省庁再編に携わり、官僚機構に詳しい田中氏は、政府が毎月勤労統計の調査手法の変更を“不適切”だったと説明していることについて「明らかに不正だ」と指弾する一方、犯人捜しに終始せず、こうした不祥事が起きた原因を徹底究明すべきだと訴えた。

 議会制民主主義で長い歴史を持つイギリスの例を引き合いに、同国では議会が責任を持って行政の不祥事を調査し、再発を防ぐ仕組みができていると説明。「日本では与野党の駆け引きに使われてしまい、本当の究明ができない」と問題提起した。

 統計不正問題が起きた背景には、公務員制度改革で2014年に内閣人事局が設けられことで官邸が各省庁の幹部人事を掌握するようになり、「公務員がさらに政治化した」ことがあると分析した。現役官僚は「今や(官邸に)耳障りの悪いことは言わない。行き過ぎた忖度だ」と嘆いた。

 不祥事の再発防止策としては、事務次官を各省庁の内部統制の責任者として厳密に位置付けることなどを提案した。田中氏は事務次官について、「日本では1年交代の名誉職となっている」と皮肉交じりに話し、一方、「イギリスでは予算や会計の詳細までチェックできない大臣に代わって責任を負っているため、政治家からの不当な介入にもノーと言える権限を持っている。ルールをねじ曲げられなくなっている」と主張した。

 会場からは「城山三郎の小説『官僚たちの夏』の時代には事務次官が力を持っていたが」との質問があった。田中氏は「当時は高度経済成長期でいろいろなことができ、事務次官だけでなく役人に裁量権があった」と振り返り、官邸に権力が集中する一方、地盤沈下の進む霞が関の現状を憂慮した。


ゲスト / Guest

  • 田中秀明 / Hideaki Tanaka

    明治大学公共政策大学院教授 / Professor, Graduate School of Global Governance, Meiji University

研究テーマ:統計不正問題の深層

研究会回数:2

ページのTOPへ