2019年01月25日 16:00 〜 17:30 10階ホール
「一帯一路と中国のエネルギー安全保障」郭四志・帝京大学教授

会見メモ

中国の「一帯一路」構想はエネルギー安全保障が最大の狙いで、そのために沿線国からの原油・ガス供給ルートの多様化をめざしていると解説。課題は資源調達や環境保全での日中民間協力強化で、国内の原発建設への住民の不安には情報公開が重要と指摘した。

 

司会 脇祐三 日本記者クラブ会員(日本経済新聞)


会見リポート

中国が目指す資源獲得ルートの多様化

 中国の習近平政権が推進する「一帯一路」構想には、沿線国や周辺国の期待と懸念が交錯する。巨大経済圏の構築を通して、中国は何を得ようとしているのか。中国のエネルギー政策に詳しい帝京大学の郭四志教授は会見で、「最大の狙いはエネルギー安全保障だ」と指摘した。

 経済成長と生活水準の向上に伴い、中国のエネルギー需要は右肩上がりに増加してきた。そのため、石油や天然ガスの輸入は急増し、対外依存度が高まっている。郭教授によると、石油・天然ガスの輸入量の8割以上が、インド洋やマラッカ海峡などを通る「シーレーン」を経由しているという。シーレーンは有事の際に米軍によって封鎖されるリスクをはらむ。資源産出国である中東や中央アジアと中国をつなぐパイプラインなど陸上輸送路の確保は、エネルギー安全保障の強化に直結する。一帯一路構想の狙いに、「輸入ソースと輸送ルートの多様化」「エネルギー供給網の構築」を挙げた郭教授の分析には説得力がある。

 一帯一路構想は、人民元経済圏を形成する野望でもある。中国は、人民元がドルやユーロのような国際基軸通貨となることを目指しているが、国際決済で元が使われる割合は依然として低い。郭教授は「ロシアやイラン、アフリカの一部の国とのエネルギー貿易で人民元決済が増えている。エネルギー貿易の決済が、人民元の国際化の突破口になるかもしれない」との見方を示した。

 ただ、一帯一路沿線には治安や政治情勢が不安定な国も多く、採算性や当事国の債務返済能力が疑われる事業もある。会見で郭教授は、日中韓を中心とした「東アジアエネルギー・環境共同体」の実現を呼びかけた。一帯一路沿線国で共同入札・開発を進め、資源をより安く調達しようという提案だが、日本が中国と協力する場合は、複合的な視点で慎重に判断することが求められるだろう。


読売新聞社科学部 蒔田 一彦

ゲスト / Guest

  • 郭四志 / Guo Sizhi

    帝京大学教授 / professor, Teikyo University

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