2018年09月21日 16:00 〜 17:00 10階ホール
小和田恒・前国際司法裁判所判事 会見

会見メモ

国際司法裁判所(ICJ)判事の任期を3年残して辞任。「外交官、大学教授、そして裁判官として計65年間、国際社会の平和・秩序を追求し続けた。ICJはその最後の総仕上げの15年間だった」と総括した。第二次世界大戦中の人権侵害や河川の汚染による二国間の環境問題など、ICJ所長時代に判断を下した事例を紹介し、裁判の内容が多岐にわたってきていることも紹介した。 

 

司会 川村晃司 日本記者クラブ企画委員(テレビ朝日)


会見リポート

米外交、内政干渉の疑いも

杉田 弘毅 (企画委員 共同通信社特別編集委員)

米外交、内政干渉の疑いも

 中学1年生で敗戦を迎えた。東京大学に入学したのは1951年。日本は国際社会でどんな役割を果たしたらよいか、国際秩序をどうつくっていくか、そして「太平洋戦争を2度と起こさないためにはどうしたらよいか」。

 戦後生まれとは違う、固い信念をもって65年間、外交、そして学界、国際司法裁判所の判事(のちに所長)として、常に国際法の第一線にいた。

 峻厳。20年以上前、国連大使の時代に毎日のように取材した筆者はそんな感じを抱いたものだ。なぜだろうと当時は思ったのだが、「弱肉強食の抑止力となる国際法」をつくり、実行する仕事への真摯さゆえかもしれない。戦争を防ぐという目標を共有しているからだろうか、ジャーナリズムにも期待をかけ、応援してきた。

 国家間の紛争を法の力で裁く国際司法裁判所だが、今は環境、人権保護など多岐にわたる。判決も勧告的意見も増えている。目を通す資料も多く「金曜日に宿題を持ち帰り、月曜日に答えを出す」ような日々だという。

 それにしてもトランプ米大統領が国連を軽視し、国際合意から簡単に離脱する時代に、国際法を守り、育てる精神はどうなってしまうのか、との疑問がわく。イランに対する一方的な経済制裁、しかも日本に同調をきつく命じるその姿勢はどう見たら良いのだろう。

 「嘆かわしい状況だ」「国際秩序を無視したアメリカ・ファーストというのは内政不干渉の原則に反するのではないか」と直言である。現役を退いただけに自由にものを言えるのだ、と語られるかもしれないが、国際秩序を考えぬいた末の結論だけに重い。本当のリアリストということか。現役外交官にもぜひ聞いてほしい。

 そして小和田さんには豊富な体験と貴重な見識を広く伝えるメモワールを残してほしい。今再び日本の国際社会での役割をじっくり考えたい時だからこそ、なおさらそう願う。


ゲスト / Guest

  • 小和田恒 / Hisashi Owada

    前国際司法裁判所判事 / former judge of the International Court of Justice

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