2018年11月14日 13:30 〜 15:00 10階ホール
「世論調査と報道」(3) 米中間選挙結果と世論調査 飯田健・同志社大学准教授

会見メモ

2016年米大頭領戦で、なぜ選挙結果予測が間違えたのかを解説し、2018年中間選挙における結果と予測の関係を分析した。

 

同志社大学飯田准教授ページ

 

司会 山田惠資 日本記者クラブ企画委員(時事通信)


会見リポート

予測的中も、白人票は読み切れず

辻 浩平 (NHK報道局国際部)

 型破りなトランプ大統領にどのような審判が下されるのか。世界が注目したアメリカの中間選挙は、上院は与党・共和党が維持、下院は野党・民主党が奪還する結果となった。これは事前の世論調査の結果通りでもあった。結果を正確に見通した世論調査はどのように行われたのか。選挙結果と事前の予測の乖離はあったのか。あったのなら、それは、なぜなのか。こうした疑問に明確に答えたのが、飯田健氏の会見である。

 世論調査に基づく勝敗予測の要は、「重み付け補正」だという。これは調査機関が、ウソをつく回答者や投票に行きそうな人、そうでない人の割合などを、生データに変数として補正をかけることで、より正確な結果に近づける試みだ。この補正をどう行うかは、各調査機関ごとに異なり、まさに「企業秘密」の部分。精度をさらに上げるために各種調査の「平均の平均」を取る手法もあるとのことだった。

 2年前の大統領選挙でアメリカの勝敗予測は大きく外れている。どの調査機関もトランプ氏の当選を予測できなかったのだ。それでは、今回の中間選挙ではどうだったのか。結論から言えば、各種調査はおおむね勝敗を正しく予測していた。しかし、それでも十分読み切れなかったのが白人有権者の投票行動だと、飯田氏は指摘する。

 これは2年前の大統領選挙でも同様で、共和党を支持する白人が過小評価される傾向にあったのだ。非白人の割合が増え続けるアメリカだが、白人は投票する人の割合が高い。このため、白人の投票行動が読み切れないという事実は、今後の大統領選挙の行方を考える上で示唆に富んだ分析だった。

 「世論調査に基づく選挙結果の予測は当たらない方がいい」。日本とアメリカの世論調査を研究する飯田氏は、会見をこう締めくくった。その心は、選挙予測が当たることが確実だと、勝つこと(負けること)が確実な州(選挙区)に候補者が足を運ばなくなり、政治家が有権者の声に耳を傾けなくなるというのだ。世論調査の奥深さを突き詰めた研究者の鋭い指摘に思わずうなった。


ゲスト / Guest

  • 飯田健 / Takeshi Iida

    日本 / Japan

    同志社大学准教授 / Associate Professor, Doshisha University

研究テーマ:世論調査と報道

研究会回数:3

ページのTOPへ