2018年09月18日 16:00 〜 17:30 9階会見場
「米国の対イラン経済制裁再開」坂梨祥・日本エネルギー経済研究所中東研究センターセンター長代行

会見メモ

今年5月のイラン核合意からの米国の一方的離脱、その後の対イラン経済制裁再開のイラン内政や対外関係に与える影響について分析した。「トランプ政権はイランを追い詰めようとし、経済は悪化してきている。ただし、イランは簡単に諦める国ではない」とする。イランの最大の関心は、イスラム共和国体制の存続であり、それを危うくするような政策はとらないと断言した。

 

司会 脇祐三 日本記者クラブ元企画委員(日本経済新聞)


会見リポート

「イランは簡単には諦めない国」

上杉 素直 (日本経済新聞社コメンテーター)

 坂梨氏は、記者会見の冒頭、最近増えているイランにまつわる報道の多くが「ネガティブだ」と指摘した。米国のトランプ大統領やポンペオ国務長官が発信するイラン敵視の情報がインターネット経由であふれ、イランのイメージ形成につながっていると語った。在勤経験もあるイラン専門家として、イランの視点に立った独自の分析を披露してくれた。

 大きく捉えた現状は「イランが周辺で起きたことに対応するなかで生まれた状況だ」と説明した。2000年代に米国がアフガニスタン攻撃に続いてイラクのフセイン政権を打倒した結果、地域でイランの力が相対的に浮上。米国がイラクを足場にイランを攻撃する事態を回避することが、イスラム共和国体制の存続を最優先するイランにとって大きな課題になっていったという。

 「イランは簡単には諦めない国だ」と何度も繰り返した。1979年のイラン革命以降、米国がさまざまな経済制裁を打っても、「イランの行動は変わらなかった」と驚異的な粘りを強調した。中東における米国のプレゼンス低下を危ぶむ親米のイスラエルやサウジアラビアの思惑を映す形で、「イランが邪悪だから米国の介入が不可欠」というストーリーが正当化されやすい国際社会のムードを読み解いた。

 日本に期待されるのは、公正な仲介者の役割だと話した。米国との関係は日本にとって重要だと理解しつつ、それでもイランは日本に大きな期待を寄せているのだという。中国やロシアにとっては「イランは対米関係の1枚のカード」。欧州は中東との歴史的な関係もあって米国とは一線を画す。そんな中で日本はどう振る舞うべきか考えさせられた。

 米国のイランへの圧力が強まるなか、今後のイラン情勢はどんな展開をたどるのか。「長年見てきて、イランについて『絶対にこうなる』とは絶対に言えない。思ったようにはなかなかならない」と話して、記者会見を締めくくった。


ゲスト / Guest

  • 坂梨祥 / Sachi Sakanashi

    日本 / Japan

    日本エネルギー経済研究所中東研究センターセンター長代行 / Acting Head, the Japanese Institute of Middle Eastern Economies (JIME), the Institute of Energy Economics, Japan (IEEJ)

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