2017年09月02日 14:00 〜 15:30 10階ホール
上映会「葛根廟(かっこんびょう)事件の証言」

会見リポート

ソ連軍攻撃で 日本人多数が死亡

果たしてどれだけの人が、終戦の直前に起きた、この悲惨な事件のことを知っているだろうか。

 

1945年8月14日、満州(現中国東北部)のチベット仏教寺院、葛根廟の近くで、日本人避難民がソ連軍の攻撃を受け、1000人以上が死亡した。これが葛根廟事件だ。

 

映画は、当時の状況を知る生存者や遺族ら12人のインタビューで構成、事件を時系列で追っていく。

 

満州国興安省の省都、興安には3000人の日本人が居住していた。8月9日未明、ソ連参戦の報が入る。この後、素早く逃れた人々と、列車には乗れず、南東に35キロ離れた葛根廟を目指した人々の間で明暗が分かれた。約1300人の集団にソ連軍の戦車部隊が砲撃を行い、最終的な生存者は約130人だった。

 

自決によって亡くなった人も多かったという。母親たちは、幼い子どもたちの首にナイフを当て、あるいは毒薬を飲ませた後、自らの命を絶っていった。母や妹の最期を語る証言者の表情が痛々しい。

 

この作品を製作した映像ディレクターの田上龍一さん(43歳)は、3年前に事件を知ったという。生存者らが編纂した『葛根廟事件の証言―草原の惨劇・平和への祈り』(新風書房)の刊行を伝える新聞記事を読んだのがきっかけだった。

 

この時、日本記者クラブで行われた関係者の会見の模様をネットで見て大いに触発されたという。現地への慰霊の旅にも同行した。

 

ロシア側に事件の記録はないという。一方で、ソ連の攻撃は、組織的、計画的で過激だったという日本兵の目撃談がある。なぜ民間人に向かってそのような攻撃が行われたのか。事件の分析は、残された課題だ。

 

ともあれ、歴史の記憶を刻む貴重な映像記録である。


読売新聞社論説委員  天日 隆彦

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