2017年08月25日 14:00 〜 15:30 10階ホール
著者と語る 『李徳全 日中国交正常化の「黄金のクサビ」を打ち込んだ中国人女性』(日本僑報社)監修 石川好氏

会見メモ

監修者として関与した。李徳全は、中国政府と国交がない時代、戦犯とされ中国に残っていた約1000人の日本人の帰国に尽力した民間の中国人女性。「日中民間交流の重要性を示した人物。日中で忘れられているが、彼女は将来の日中友好のシンボルになる可能性もある」。「日中戦争で日本は中国に宣戦布告をしていない。これを忘れてはいけない」

 

司会 倉重篤郎 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞)


会見リポート

B、C級戦犯を帰国させてくれた女性

倉重 篤郎 (企画委員 毎日新聞社論説室専門編集委員)

1954年10月、ある一人の女性が中国紅(赤)十字総会の代表団を率いて、中華人民共和国建国後初めて日本を訪問した。訪日の目的は、日中戦争後なお中国に囚われていたB、C級戦犯1000人を日本に速やかに帰国させることだった。

 

その女性が、宋慶齢らと並び新中国で当時最も著名な女性、李徳全だった。代表団は、まだ国交のない日本に14日間滞在、後のLT貿易(廖承志、高碕達之助氏の頭文字を取り62年に始まった日中間の半官半民貿易事業)につながる人脈を作ったほか、日中民間交流の走りにもなった。

 

その忘れられた史実を今一度発掘し直したのが、作家であり、前「新日中21世紀委員会」委員の石川好氏だ。石川氏もまた偶然、李氏の存在に気付き、この話が中国側でも埋もれた歴史になっていることを知った。そのうえで、李氏の功労を再評価することが今後の両国関係改善に役立つ、との考えから各方面に働きかけ、今回のこの伝記的ノンフィクションの日中合作、同時出版を実現させた。

 

石川氏は、「著者と語る」の中で、その経緯を説明し、いかに72年の国交回復以前に政府に頼らない実のある民間交流が行われていたかを強調。今後の日中関係も「以民促官」的交流、つまり、民間が先行し政府間交渉を促すような努力が必要だとの考えを示した。

 

また、「日本は、41年の対欧米開戦時には当時の主権国家の3分の2にあたる多数の国々に対し宣戦布告したのに、中国に対してだけは31年以来宣戦布告もせず、事変扱いにして中国国内で戦闘行為を行ってきた」「つまり、中国を他者として認めてこなかった。それは今でも続いており、中国が大きくなったことを認めたくない心情が働いている。中国にかなわない、負ける、ということを認めて初めて和解が成立する」と語った。


ゲスト / Guest

  • 石川 好 / Yoshimi Ishikawa

    日本 / Japan

    監修者・作家 / editorial supervisor/author

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