2017年05月25日 15:00 〜 16:30 9階会見場
セイコウ・イシカワ・ベネズエラ大使会見

会見メモ

インフレが拡大し反政府デモが続くベネズエラ。「危機」の実情を日系2世の駐日大使が説明した。他国のデモの写真に説明をつけて野党側への同情を誘うフェイクニュースの実例も紹介。「グローバリズムに対抗し、われわれは新しい発展モデルを探し続ける」

 

司会 中井良則 日本記者クラブ顧問

通訳 横田佐知子


会見リポート

「危機の真相」を探れ

遠藤 幹宜 (共同通信社外信部)

世界最多の原油確認埋蔵量を誇る南米ベネズエラが揺れている。4月以降続く反政府デモの死傷者は多数に上る。駐日ベネズエラ大使のセイコウ・イシカワ氏は「非常に複雑な状況にある」と認めた上で、日本語の報道が「(米国の影響を受け)事実と離れたものになっている。読者はベネズエラが破滅寸前だと思ってしまう」と指摘。「真摯に真実を追求してほしい」と求めた。同じ反米左派のキューバ、ニカラグア、ボリビアの各駐日大使も臨席。3人は自らの言葉で連帯の意思を示した。

 

故チャベス前政権下の2005年から駐日大使を務めるイシカワ氏は日系2世。完璧な日本語や英語を話すが、会見はスペイン語で行われた。イシカワ氏は「内戦状態」「第2のシリア」と日本語で報じた記事を例示。暴徒化しているのは一部に過ぎず「粗暴な人が国民共存に悪影響を及ぼしている」と強調し、国民の8割以上がデモに否定的だとする調査結果を示して「外部の力にイメージ操作されている」と指摘した。

 

惨状を示しているとされるネット上の写真も例示。他国の過去の写真の流用が多く「フェイクニュースだ」と主張した。米国が野党勢力に資金援助してきたとして、インフレや深刻な物不足を「経済戦争」と表現し「恣意的に問題を作ろうとしている」と訴えた。人間開発指数やジニ係数は改善が進み中南米でも上位にあるとして、石油の利益を福祉に回す政策は成功していると強調。一方で「恒常的なモデルがないことを現政権は理解している」として、新たに発足する制憲議会で「どのような経済モデルがふさわしいか模索する」と述べた。

 

会見は2時間近くに及んだが、野党が3分の2を占める国会の無力化を狙う政権の強権姿勢には残念ながら言及がなかった。米国の介入があるにせよ、有数の産油国の国民生活困窮や世界最悪の治安は紛れもない事実だ。メディアが現地から真実を伝える必要があるのが大使の指摘通りであることは論をまたない。


ゲスト / Guest

  • セイコウ イシカワ / Seiko Ishikawa

    ベネズエラ / Venezuela

    駐日ベネズエラ大使 / Ambassador

研究テーマ:最近のベネズエラ情勢

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