2017年01月11日 14:00 〜 15:30 9階会見場
尾崎久仁子 国際刑事裁判所(ICC)第二次長

会見メモ

ICCは国際法に基づき個人の刑事責任を問う初の常設国際刑事裁判所。国連とは別組織。ただ米中露が不参加など問題点も多い。「各国が自力で適正に裁けるようになればICCは消える。それが理想」「普遍的裁判所として国際基準の形成が重大な役目」

 

司会 鶴原徹也 日本記者クラブ企画委員(読売新聞)


会見リポート

ICCの任務は良質な裁判

広瀬 公巳 (NHK解説委員)

国際刑事裁判所(ICC)は、国際法に基づき個人の刑事責任を追及するのが仕事だ。対象となる犯罪はジェノサイド、人道に対する罪、そして戦争犯罪。安保理の決定でユーゴスラビアやルワンダも扱ってきた。国際社会全体の関心事である重大な犯罪の個人の責任を問うという、とてつもなく大きな責務の「DNA」となっているのは、ニュルンベルクと東京裁判だという。

 

当事国の法が裁かない個人の犯罪であっても、想像を絶するような残虐な行為があれば国際社会はそれを見過ごすことができない。尾崎さんの仕事の領域は新しい。

 

その尾崎さんが向き合っている現場のほとんどはアフリカだ。被疑者の権利をどう守っていくのか、被害者の声にどう耳を傾けるのか。裁判をする能力や、時に意欲にさえ欠ける人たちに、何が許されないことなのか、そして司法とはどういうものであるべきないのか、裁判の国際基準を作って、「良質な裁判」の例を示していくことが大きな役割。

 

国際刑事裁判所が審議の中で最も気を使っているのは被害者や証人の保護だそうだ。性犯罪の被害者や村八分にされる証人を守るために、裁判の公開の原則からははみ出ることがあっても厚く保護に務める。こちらが思うような司法を当事国に根付かせることはできるのか。尾崎さんは「われわれの理想は、われわれがいる必要がなくなること」だという。

 

国際刑事裁判所への参加国は現在124カ国。米中ロは参加しておらず紛争の多いアジアに加盟国は少ない。これまでに23件の裁判が行われ、有罪が9名、無罪が1名とのこと。小さな所帯で予算も多くない。国際刑事裁判所のこれからの希望は、との質問に対し尾崎さんは、「良質な裁判を続けていくことです」と笑顔で繰り返し答えた。


ゲスト / Guest

  • 尾崎久仁子 / Kuniko Ozaki

    日本 / Japan

    国際刑事裁判所(ICC)第二次長 / Second Vice-President, International Criminal Court

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